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川上未映子 『ヘヴン』

ヘヴン


「僕とコジマの友情は永遠に続くはずだった。もし彼らが僕たちを放っておいてくれたなら―」驚愕と衝撃、圧倒的感動。涙がとめどなく流れる―。善悪の根源を問う、著者初の長篇小説。   (2009.9.1  講談社)


川上未映子の作品が苦手という方は多いかも知れない。実は僕もそうだ。それは作品の内容というよりも、あの独特というか奇を衒ったというか、作者の意図はわからないが読者にはなんだかな~と思ってしまう文体にある。関西人の僕でさえあのコテコテ感はいまどきどうだろうと思ったくらいだ。まぁああいうのに時代はないのかも知れないが、受け入れがたく何作か挑戦したがどれも読書を頓挫せざる終えなかったというのが本音である。

だが、今回のこの『ヘヴン』はそういう関西人風の語りではなく、いたって普通に標準語で書かれてある。なので、これが最後だと思って読んでみたが、なんと読了できたのである。これには嬉しさがこみ上げてきた(笑)関西弁の作品ももしかしたら内容の方は読むに足るものが濃縮されてるのかも知れないが、読了してないのでわからない。だが、本書にはちゃんと作品に流れるエッセンスがあり脱個性してくれてよかったなと思う(苦笑)

だが、これも個人的には評価の難しい作品となってしまった。物語のテーマは〔いじめ〕で、主人公である【斜視】の僕と女子でいじめられているコジマのいじめの描写、そしてこの二人の関係性の育みにほぼ終始する。いじめの描写がエスカレートしていったりするので、物語だけなぞって読むと残酷性ばかりで痛々しい。だが本書のそれは川上未映子にとっての表現の手段のように映り、真のテーマは〔善と悪〕を描くことにあったように感じれるだろう。なかでも圧巻なのは僕が百瀬といういじめ側NO.2と一対一でいじめる側VSいじめられる側の論理をまじ合わせるところ。もちろんいじめを普通に考えるといじめられる側にも理由があるというような論理に一理もなく、いじめる側が悪いというのが倫理だろう。だが、本書のそれはどちらが善で悪というような白黒つけるのではなく(白黒つけるために書かれたなら問題作だ)、善と悪は相対的なものだというものを表現したかったのではないだろうかというのがひしひしと伝わってくる場面だった。

考えて見て欲しい。どちらが善でどちらが悪かというのは、ある程度の問題ならばいじめの問題に関わらずしっかりと判断できるのではないだろうか?戦争はどうだろう?政治は?経済に差別に、原発は?悪い、あるいはよくないと思っているにも関わらず、許容してしまっていることはないだろうか。またはわかってても個人だけではどうにもできない問題があるのでは?そう考えるといじめは社会の、世界の縮図だというのが本書によって理解せざる終えないだろう。主人公だけでは立ち向かおうとしようがなんだろうが、どうにもできないのだ。だがそれだけならいじめの小説で終わらせてもいいわけで、そうしなかったのが主人公と百瀬の理論合戦なのだ。百瀬の理論武装は一見こじつけや自己の正当化にしか見えないが、主人公の論理は無残に打ち砕かれてしまう印象的な論理展開としている。となると、作者はいじめを肯定する気はもちろんないと思うことを考慮すると、いじめというもんを相対的に描きたかったとしか捉えようがない。もしいじめ肯定するんだったらいじめる側の視点から描いたほうが斬新だし、かといってしたら糾弾されるからできないだろうし(苦笑)やっぱり哲学の影響を受ける著者だけあって、いじめに関わる両者の言語化は価値あるものだったと思う。

だが、ラストのこれはなんだろうか?理論合戦の部分で「いじめに斜視は無関係だ」みたいなセリフがあったのに、斜視が○○で斜視が好きだったコジマが突然いなくなったら途端新しい世界が開けちゃったの?これって視覚的な世界において?ないとは思うけど、心理的な開放感とかなのだろうか?百瀬の言葉があったにも関わらずラストがこうなっちゃったのはただの逃げだ。美しくもないうえに、何も変わらずこの光はすぐ暗に戻ってしまうのがわかりきっている。著者自身が答えを捻り出すことができずに、無難に収束させちゃった感しかなく残念でならない。まぁ、やっぱり物語とし読むなってことなんでしょうね(苦笑)ということで、結論としては物語として読んだら全くの駄作だが、文学と捉えるならば一定の価値は見出せる作品だと思う。



3.6 なむなむ!




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.14 2011 【本:サスペンスフル】 comment2 trackback0
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