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島田雅彦 『悪貨』

悪貨


ある日、ホームレスが大金を拾う。だが、その金は偽札だった! 捜査にあたった日笠警部が事件解決のために招喚したのが、偽札捜査のスペシャリスト・フクロウ。 一方、「美人すぎる刑事」エリカは、国際的金融犯罪を取り締まるため、マネー・ロンダリングの拠点となる宝石商・通称「銭洗い弁天」に潜入捜査をすることになった。そこで捜査線上に浮かび上がってきたのが、グローバルな資本主義を超える社会を目指す共同体「彼岸コミューン」で育ち、今や巨額の資金を操る野々宮という男だった。 最後に勝利するのは、金か、理想か、正義か、悪か? ハイスピードで展開する「愛とお金の物語」   (2010.6.21  講談社)


島田雅彦さんの作品は本書がファーストコンタクトです。あまり縁がない作家さんでしたが、このタイトルに惹かれ手にとってしまいました。経済の興味がある上に〔貨幣〕、それも〔悪貨〕ですから見逃せませんね^^

まず初めに一人のホームレスが朝ベンチで起きると足元に現金100万円入った封筒が置いてあることに気づく。それを天からの恵みだといいホームレスは衣服を新調し身だしなみを整え食事をするのだが、あろうことか引ったくりにあってしまい所持金はポケットにある4360円となってしまう。そのホームレスは故郷にいる自分の子供にお菓子などをつめ郵便で送り、手元に残ったのは100円ライター一つ。さぁこのホームレスはどうしたのか?こういう場面から始まるのだが、この場面からしてもう〔お金〕(マネー)というものの正体を暗示しているのである。その一万円札の諭吉がいいたかったのは「カネは人の上に人を造り、人の下に人を造る」と。

その引っ手繰られた100万円の残りも「紙幣」というお金なので、これまた人から人へと流れていくのであるが、これがそもそも〔悪貨〕なのである。もちろん使ってる本人にはそんな認識は全くないが、そのマネーを掴んだ人々に災いを齎してゆく。タイトルが悪貨なので作者はずっとこの調子でマネーの危うさを提示しながら物語を進行していくのは言うまでもない。他にもマネーロンダリング(資金浄化)や日本の現状を揶揄なども盛り込んではいるが、やはり作者が〔貨幣〕というものを主役にした目の付け所が素晴らしい。逆に貨幣を扱った小説というものも、過去にいくつもあるのはある。が、今も昔も〔貨幣〕というものの問題はずっと変わらずあり続けているということなのだ。ゲゼル、ポランニー、トルストイ、エンデなどなど、経済学者が理論を組み立てようと、作家が研究し提言しようと変わってないという怖さ。やはり〔貨幣〕は変わらないしこれからも変われないと思うと、寒気がしてくるのは僕だけなのだろうか。これを読んで「怖い」という感情の一つも浮かんでこなければ、危機感が薄いのかも知れない。

未読の方の為に祖筋はあまり言わないでおくが、島田雅彦の言いたいことは概ねこうだ。「現行の貨幣制度は危ないよ、そのうち破綻するよ」ということ。lこれが〔貨幣〕を研究してる人たちの総意でもあるだろうし、グローバル資本主義のつけだし、ゆるぎない真実だろう。本書はこの題材たちからすると作品のテンションは少し軽い気もするし、主人公のラヴロマンスなんて特に必要ない気がする(まぁ小説なのでしょうがないのかも)。粗も探せば出てくる(ご都合主義な抜け穴など)。でも地域通貨「アガペー」が出てきたり、本書レベルは大げさだが中国の土地買占めなどの危険性を示したりと目の付け所はやはり鋭い作家だ。こういう作品が売れるような国はやはり国民の意識は政治・経済に限らず高いんだろうし、手に取る人が多ければ多いほど安心する。

タイトルで敬遠する人も多いかもしれないが、小説として読むには容易に読了できるし理解もできる。インフレーション、スタグフレーション、ハイパーインフレ、マネーロンダリング辺りの用語が理解できてれば躓くところはどこにもない。理解できてなくてもちょいとググってWikiで調べたらすぐに理解できる言葉だ。あとは読めば小説的な好みだけ。僕は小説的には軽く感じたが、それはいくつかの経済学の本や貨幣の本を読んだから、そういう面に対する軽さを感じてしまったんだと思う。この作品のテーマは大人の一般教養として知っておいたほうがいいと思うしエンタメとしても読めるので、興味がなくても一度読んで見るのもいいかも知れない。ちなみに本書には「理論的には使える偽札」が封入されている。それを見る為に手に取るのも初めの一歩になるでしょう(笑)




3.6 なむなむ!




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.23 2011 【本:社会派/社会】 comment4 trackback1

大門剛明 『罪火』

罪火


伊勢神宮奉納全国花火大会の夜に殺人事件は起こった。被害者は中学2年生の町村花歩。犯人は元派遣社員・若宮忍。花歩の母親、町村理絵はかつて若宮の恩師であり、一人暮らしの彼を家族ぐるみで気遣っていた。なのになぜ、若宮は凶行に及んだのか―。やがて事件は意外な展開をみせ、若宮と理絵に予期せぬ結末が訪れる…。人は罪を本当に許すことができるだろうか。自ら犯した罪を心から悔い改めることはできるのか。横溝正史ミステリ大賞+テレビ東京賞W受賞で話題を呼んだ『雪冤』を凌ぐ、衝撃の問題作。   (2009.12.22  角川書店)


『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞を受賞した大門さんの『罪火』。個人的にはあまり好んで読まない社会派ミステリだったが、『雪冤』は社会問題に深く切り込むと共に、ミステリとしてもどんでん返しのある総合的に質の高い作品だったと思っている。もちろん本書も社会的問題をはらんだ作品であり、読む前から期待値は高い。


『雪冤』では〔死刑制度〕の是非と〔冤罪〕という社会的テーマでもって書かれていたが、今回の『罪火』は被害者と加害者を公平な立場でもって話し合いの場を持たせる【修復的司法】というものが大きな軸になっている。本書を読むまで【修復的司法】という言葉を耳にしたことすらなかったのだが、これは「犯罪に関わる全ての当事者が一堂に会して犯罪の影響とその将来への関わりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス、又は犯罪によって生じた害を修復することによって司法の実現を指向する一切の活動を言う」(by WIKI)ということらしい。簡単に言ってしまうと被害者の感情と加害者の想いが話し合いの場によって相互理解し合えるように設ける場ということだろう。



【修復的司法】がそういうことなので、本書には被害者と加害者がいて、どちらの心情も比較的丁寧に描かれている。それは最初から最後まで顕著だが、まず始めに軸になる殺人事件に対する真相、つまり犯人が誰であるかが描かれている。つまり倒叙の手法をとっているのである。ラストを読むと一層この手法のよさが滲み出てくる作品となってるのだが、倒叙にすることで一回目読むのと二回目読み返すのとではまた違った読み方が倒叙部分で発揮される。本書の場合これが最善のミステリ的手法の選択だったのではないかと思えるほど印象的な部分だった。また終盤で披露されるどんでん返しもなかなかだ。盗んだ○○の文字の書き換え部分に関しては、間接的な伏線はあれど直接的な伏線などないので読者は推理できはしないが、これはそういう類の内容ではないのでOKだろう。他の部分では(シートの箇所など)きっちり伏線が張られていて、その伏線がラストに実を結ぶ際にはグッとくるものがあり、気分良くページを閉じられるわけではないが、救いがあって静かな余韻を残してくれると思う。



加害者も被害者も、登場人物はきっちり描かれているが、少し人物造詣に難があるなと感じた。特に加害者の人物に違和感みたいなものがあって、苛立たしい心理描写や行動とは別に、突発的すぎる行動がイマイチ受け入れがたい。実年齢は36歳として描かれているが、心を病んでいるとはいえとてもじゃないが20代にすら思えない。このような人物造詣ならば、この人物に対する精神疾患などの描写をもっと綿密に描かないと説得力にも欠けるのではないだろうか。


だが、『雪冤』と共に本書もまた個人的には質の高い作品だという評価なのは間違いない。【修復的司法】というまだ浸透してない題材を用いて、被害者感情と加害者の意識の推移などを正面から捉えていたし、極端に一方加担するのではなく、公平な目線で描いてくれてる。また、ミステリとしても一定の水準にはあるので、社会派ミステリとしての評価も上々だと思う。なによりラストの舞台が花火会場であるように、仕掛け花火が上がったようなラストが罪火を包んでくれたような余韻を齎してくれるのだった。




3.8 なむなむ!



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.06 2011 【本:社会派/社会】 comment0 trackback0

堀井義輝 『2011年、閉塞を打破せよ』

2011年、閉塞を打破せよ


産業の空洞化・低成長・デフレ・国債の膨張などから脱却するには外国為替制度・消費税と法人税・社会保障制度などを、短期間に抜本的に改革する必要がある。  (BY BOOKデータベース  幻冬舎ルネッサンス)


書評サイト『本が好き!』からの献本です。


日本の失われた10年。と言わずもう15年20年はくだらない日本の経済の停滞の解決策はあるのか?産業の空洞化やデフレ脱却、税制問題、社会保障や政治改革など問題は山積みである。そういった多くの日本の問題を幅広く取り上げ、どうすればいいのか著者の見解がきっちりと述べられているのが本書。本当に幅広く問題を取り上げているので紹介すると、

第1章 歳出の抜本改革
第2章 経済成長戦略、輸出倍増政策
第3章 税制改革
第4章 政治改革
第5章 公務員制度改革
第6章 防衛政策
第7章 教育改革
第8章 農業・漁業の構造改革
第9章 少子化対策
第10章 地球温暖化対策
第11章 宇宙開発政策

となっていて多岐に渡っているのがわかるだろう。これがさらに細分化されていて、一章の「歳出の抜本改革
」ならば、医療・介護保険、年金制度、失業手当などよくニュースなどで耳にする問題について論じられているのでとても興味が持てる。

しかし、読んでいくとこれが首をかしげてしまうのだ(苦笑)多くの問題を取り上げているのは興味深いし、ちゃんとどうすればいいか著者なりの見解(回答)もきっちり書かれてある。しかしいかんせんこの著者の言ってることを真に受けていいのか迷ってしまうような書き方がされているのだ。まず問題が提起されているのはいいのだが、次にくるのが答えになってしまっている。真ん中の過程が抜け落ちてしまっているのだ。数学の問題で問と解だけあっても、過程がなければ納得できないままだけど、それと似たような感覚。「それどうやって答え出したの?」と思ってしまうほど、「考察」の部分が抜けてしまっている。これはこういう本にとっては致命的だと思うし、良書とはなりえないだろう。多岐に問題を提起してるのはいいのだが、「考察」の部分を疎かにしてまで広範囲な諸問題に手を広げる必要は全くなく、これならば一つの物事に対してとことん突き詰めて考えたほうが面白かったんじゃないかと思えてしまう。

また、著者の文章というか思考には過激なものも多く、苦笑いしてしまう場面も多々あるのが気になる。年金につていもそうだし、防衛の事柄に至っては賛同できるものが皆無に等しい。ほぼこういった問題に対して知識がない者が本書を読んで鵜呑みにしないか心配なくらいである。

著者が自分自身で提示した問題に対して、一つ残らず打開案を述べていることはとても好印象なのだが、その打開案が一理はあっても納得できないものが多く、考察も全く足りないという点で、全体的に説得力に欠ける内容となってしまったのではないでしょうか。


2.5 なむなむ!




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.11 2011 【本:社会派/社会】 comment4 trackback0

河邑厚徳+グル-プ現代 『エンデの遺言 ~根源からお金を問うこと~』

エンデの遺言


ファンタジー作家ミヒャエル・エンデに導かれて「暴走するお金」の正体を探りに旅立つ。「老化するお金」「時とともに減価するお金」など、現代のお金の常識を破る思想の数々を紹介する。欧米に広がる地域通貨の実践―米国のイサカアワー、ヨーロッパの交換リング、スイスのヴィア銀行などをレポートする。    (BY BOOKデータベース)


本好きな方が『エンデの遺言』というタイトルの〔エンデ〕という部分でまず始めにピンとくるのはたぶんミヒャエル・エンデだろう。本書の〔エンデ〕というのはまさしく『モモ』や『果てしない物語』を書いたミヒャエル・エンデその人である。しかし、そういう一般的なファンタジー作家というイメージとは違い、【お金】の根源を問うエンデのアプローチを形にしたものが本書なのだ。といってもタイトルにあるように本書はエンデが著したものではなく、お金の根源を問うエンデとドキュメンタリーを作りたいと考え先だってインタビューを行っていたそのテープを元に書かれたものである。なぜ自身で書かなかったのかというと、エンデはドキュメンタリーが製作される前にこのテープを残して他界してしまったのからなのだ。しかし、どうしてもそのテープにあるエンデの遺言ともいえる熱弁を番組にして伝えたいという想いから、ドキュメンタリーが製作され本書が出版されたようである。そして、ここに書かれていることは、エンデが熱心に「お金の本来の形」を語る姿だった。

僕も『モモ』は一応幼少期に読んでいたのでおぼろげながら内容の記憶はあるのだが、実はあの作品にも「お金」を問う問題意識が隠されていたのである。〔灰色の男〕を何かに置き換えてみるとたぶんやんわりとでもイメージが掴めるだろう(思い浮かばなければ再読を)。それほど以前からエンデは「お金」というものに疑問を投げかけ、経済学者などと親交を深め論じてきたようなのだ。その証拠にエンデの本棚にはゲゼル『自然的経済秩序』、ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』、シュタイナー『社会問題の核心』、オンケン『ゲゼル全集』、ビンズヴァンガー『お金と成長』、マルグリット・ケネディ『利子ともインフレとも無縁な貨幣』、トルストイ『お金と何か』、ズーア『付加価値なしのお金』『利子とは泥棒だ』など、数多くのお金を論じた著作が並んでいたようだ。

それらのタイトルを読んでいくと漠然とではあるがいくつか見えてくるものが、はっきりと「利子」というものへの問題提起がタイトルからでも見えてくるだろう。だがまずはエンデが最も影響を受けたであろうゲゼルやシュタイナーの「お金の価値は減らなければならない」「お金は老化しなければならない」というテーゼに注目したい。自然界のものも人間が創造したものもすべて老化を経て消滅するというプロセスを必ず持っているが、お金に関しては老化もせず消滅もしない。人がいるかぎり膨張を続けるという得意な創造物で、これはいつか破綻に突き当たるという。確かにそれは至極最もなことでマルグリット・ケネディも「このままのシステムでいけば100年ないし200年で経済は破綻を迎える。これは計算をすれば誰でもわかることだ。」と言っているくらいである。加えて貯蓄からは利子も産まれ、お金は刷られるほど膨張してゆく。しかし、これはお金の本来の形ではなくて、お金もその他の物と等価交換されれば、役割を終え老化し消滅しなければならない。あるいは価値を減らしていつかは消滅しなければならないという。

実はこれはすでにオーストリアのヴェルグルという町で地域通貨という形で実践されていて、それが「スタンプ貨幣」というもの。これはスタンプによって一ヶ月ごとに価値が1%下がるという貨幣で、持ってても増えないばかりか、逆に使わなければどんどん価値が減少するというものなので、皆がすぐに使う。皆がすぐ使うということはこの貨幣が町でどんどん潤滑し貨幣の流通が滞ることがなくなったのである。これは町単位だったとはいえ大成功を収めたようだが、オーストリア政府の「紙幣の発行は国の独占である」ということから介入にあい禁止される。

しかしそれらの試みが地域通貨としての嚆矢となり、LETS(地域交換取引制度)や交換リングやSELなど、世界では現在2000以上の取り組みが行われているのである。驚くなかれ、実はわが国でも並行通貨というものは全国どこにでも存在していて、100や200はくだらないようだ。だが、地域通貨が流通している実感があるか?といわれると正直全くないのである。大概の方が実感してないことと思うが、これが問題でまだ全然浸透してないのである。

しかし、ニューヨーク州イサカという地域を見てみると地域通貨というものがほぼ町に浸透しているのだから驚いた。人口3万人の町で発行されている「イサカアワー」という地域通貨は、町のほぼどこでも使えるお金として流通しているのである。地元の銀行や数十社の企業でも扱われていいて、政府もこれを公認してるというのだからこれはもう成功例といっていいだろう。これを経済がどうにもならない日本でもやればいいと思うのだが、悲しいかな日本では「イサカアワー」にょうな地域通貨は違法になってしまうようなのだ(苦笑)もちろん米国では合法。しんどい国だ。。。

「イサカアワー」が成功してるのは「個人での労働に対する純粋な対価としての通貨」だからである。政府発行紙幣はどんどん紙幣に吸い取られていくが、イサカアワーは第二通貨として貯め込まれることもなく、法定通貨を補うためとして使われているからだと思う。ほかにも成功してる地域通貨はいくつもあり、法定通貨を補うお金として、現在の金融システムなどと切り離された存在で地域を救済してくれるのではないだろうか。

エンデは言う。「お金を変えられないことはない。人間が作り出したのだから」と。ネットマネーなど新たな形のマネーも登場してきているが、人の考え方次第ではまだ取り戻せるものがあるかもしれないという可能性を魅せてもらった。エンデの「東京会議」が実現していたら現状も少しは変わっていたのかな。。。



4.1 なむなむ!



あと、エンデのテープから作られたドキュメンタリー番組『エンデの遺言』をUPしておきます。もちろん、僕の文章を読むよりこちらを観た方が為になりますのでー(笑)



                         
ドミュメンタリー   『エンデの遺言』

エンデの遺言一
エンデの遺言二
エンデの遺言三
エンデの遺言四
エンデの遺言五
エンデの遺言六

.21 2011 【本:社会派/社会】 comment8 trackback1

勝間和代/宮崎哲弥/飯田泰之 『日本経済復活 一番かんたんな方法』

日本経済復活一番かんたんな方法


このままでは、日本はほんとにダメになる―飯田「脱デフレ政策、金融政策というのは、そんな難しい話じゃないんですね。それなのに、脱デフレ政策って非常に遅れたわけです」。宮崎「というか、まだ本格的には全然始動していない」。勝間「最近ようやく、しぶしぶ認めたぐらい。現状認識して、これから対策を立てて実行に移すっていう段階です。それを後押しできればと、こうして緊急で座談会をしているわけです」。徹底的に考えました。    (BY BOOKデータベース  光文社新書)   (BY BOOKデータベース  光文社新書)

評論家・宮崎哲弥、経済評論家(?)・勝間和代、経済学者・飯田泰之というメディアで活躍する三人が日本経済の復活へのシナリオを鼎談。経済が専門ではない宮崎哲弥が勝間和代と語りつつ、経済学者である飯田が学者視点で意見を挟むというのが基本的な図式。なので、僕みたいな知ろうとが読む場合は宮崎哲弥視点で読むと読みやすいかと思う。

本書には大まかな主題があって、それはタイトルにあるように失われた10年とか言われるように長い不況に陥っている日本経済をどう脱出させるか?というのが主題だ。そしてその答えはとてもシンプルで「デフレをインフレにすればいい」ということ。そしてそれには「日銀がどんどん紙幣を刷ればいい」というなんとも単純明快な解が示されている。これは読んだ限りどうやら三人ともに共通の意識のようだった。まぁそれにはまず潜在GDPと潜在成長率の目標値へもっていき、安定化の為に安定化政策を行う。そして、構造改革を行うなどなどもっと細かな道筋も明記されていたりもするのでこのデフレ脱却という主題も論理的に論じられていた。

しかしこんなに単純な政策だけでデフレが解消できるとは信じがたい。一般人にもわかり易く、尚且つ専門的な用語もしっかりと咀嚼できるように説明されて理解しやすいかったが、この論だけでデフレが解消できるほど単純な図式じゃないような気がする。でも、これも一つの手であると思えるのは、日銀は今まで大量の紙幣を刷ったことがないからだ。日銀総裁は「こんなことしてもインフレはおきない」という意見のようだが、やってみたこともないのに決め付けるのはナンセンスな気もする。

少し話が変わるが〔フィリップス曲線〕を丁寧に説明した章があるのだが、ここで「失業率と物価上昇率の間には逆相関がある」という記述があってインフレ率が低いときには失業率が高いといっている箇所がある。それを踏まえて2004年~2007年に行われた〔テイラー・溝口介入〕という35兆円という大規模な円安誘導が行われた。このとき実は景気が少し良くなった(一時期景気は上向きだといわれてた時期)。まぁでもこれも失業率が下がる前に金融緩和を続けなかった為に効果がでなかったようだが、こういう政策もどんどんやっていったらいいと思う。無駄にばら撒きするくらいなら、こういう政府介入でお金を使ってくれたほうが個人的には全然嬉しい。なので、日銀に紙幣を刷らせるために日銀法改正とか何を言われようと政府介入して、日銀の尻を蹴っ飛ばしと動かせばいいんじゃないかな。やったことないのに、やってみる価値もないというのもないでしょ(笑)

またちょっと以外だったのは管総理の以前の発言である。今は発言に配慮が足りないとか情けないというような意見まである管総理だが、宮崎哲弥の記述にあった「最小不幸社会」というコンセプトは感心した。野党時代の発言のようだが、これは「ある程度幸福になるのは個人の努力によるべきだが、多様性のある人々の住む社会で、個人の努力だけではうまくいかない問題に関しては、政治で解決する」という意味。「個人の努力ではどうにもならない」というのは、すなわち貧困や病や争いのことであるのだが、これを政治で解決して不幸を最小化する社会を目指そうというもの。以前ベンサムの「最大多数の最大幸福」やジョン。ロールズ「格差原理」以来のアイディアだと宮崎哲弥も褒めていて、僕も管総理の観る目が少し変わった(少しだけねw)。コロコロ変わるここ最近の総理大臣はデフレについての危機感が薄かったようだが、管総理はそれに関しても弱いかも知れないが危機感を持ちつつあるというとこも+の印象だ。いろいろ意見はあるだろうが、総理らしからぬ発言や行動とこういう感心できる点があるということで、管総理の評価を「総理失格」という烙印を押すにはまだ時期尚早だと改めた。

あと最後にいうのもなんだが、まず多くの人が「デフレ」とは何かをちゃんと認識しなければならないといっていた。それは国民だけでなくメディアも政治家も同じで、デフレには良いデフレなんてないということ。スーパーなどで食べ物や日用品などの物価が安くなって消費者としてはそれは嬉しいことだ。だが、物価が下がるということはそれを生産する企業はコストを削減しなくてはならず、ボーナスや人員削減や減給に繋がる。そういうもので給与に影響がないのは政治家や公務員や大学教授やメディアだ。民間や自営業などの国民にはいずれ減給などの形で返ってきちゃうのだ。だから、目先の物価の下降に浮かれてはいけないという。もちろんハイパーインフレなんてのは供給過剰でデフレを引き起こしている日本においては起こりえないようなので心配しなくていい。またインフレというと物価が上昇して嫌なイメージがあるかも知れないが、これも誤解で、一定の上昇率を保っていさえいれば失業率は減少するとともに、経済成長するには一定のインフレ率も不可欠らしい。小泉政権下で規制緩和や民営化を主軸とした構造改革が行われたが、デフレ不況下という最悪な状況で実施されたりもしたので安易に呼応してはならない。なので、まずは一番にこのデフレスパイラルから早く脱却させて欲しいと願うばかりだ。でもこれ一冊でデフレへの処方箋を知った気になるつもりもないので、もっとデフレの関連本も読んでいきたい。



3.6 なむなむ!



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