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ジャン=ポール・サルトル 『悪魔と神』

悪魔と神


誇大妄想狂の<私生児>ゲッツ、悪魔と同居している破戒僧ハインリッヒ、農民の娘ヒルダ、革命的農民ナチス・・・・。十六世紀ドイツの農民戦争勃発の直前に時期をとり、これら個性的群像を配して、サルトルが現代の観点から、人間の善と悪、霊と肉体などあらゆる人間論理の問題に独特の方法論で鋭いメスを入れ、実存主義道徳ともいうべき新しいテーマを提示した戯曲大作。  (BY 本書背表紙  新潮文庫)


古本でたまたま見つけた青い背表紙のサルトル。このシンプルな装丁も初めて見た。新潮文庫でサルトルは比較的見かけない一品なのでついつい買ってしまったけど、先ごろ読んだカミュとも密接な関係があるようなので、サルトルにも興味が湧いていたところだ。これ一作で実存主義の何がわかるわけでもないと思ったが、ニュアンスだけでも齧れれば儲けものという姿勢で挑む。

この『悪魔と神』は戯曲であり、第三幕十一場、登場人物が総勢三十五名以上、時間にすると4時間にもなる大作戯曲である。舞台は十六世紀ドイツの農民戦争が勃発する直前を選び、ドイツの各地を勇戦した傭兵隊長ゲッツを主人公にしている。サルトルはこの人物を実存主義哲学の立場に立たせ、タイトルにあるように<善>と<悪>を究明しようと試みた作品である。サルトルもカミュも実存を文学・芸術で表現しようとするところで同一線上にいるのだろう。ところで何度も連呼している実存主義とはなんぞやというと、人間の本質ではなく個人実存を哲学の中心に置き、科学的方法によらず人間を主体的に、且つ自由と責任を強調するもの。また、実存は孤独・不安・絶望につきまとわれていると考えるのが一般的だと言われている。これを見ると主人公のゲッツという個人哲学を中心主体にし、最後まで自己の責任を持たせているのでピッタリ当てはまる。しかも、しっかりと孤独・不安・絶望という実存も兼ね備えていたので実存主義のテクストとしてこの一作だけでもかなり骨太である。

そしてサルトルが描きたかったであろう、<善>と<悪>も作中にある。悪魔的な存在であったゲッツがある地点から<善>を行おうとさいを振るが、それをしようと試みることによって<悪>を行っていた時の悪行よりもさらに酷い悪行を犯してしまうゲッツの絶望。そのため「神は死んだ」と嘆くゲッツから実存主義自覚から農民戦争の指導者となるとこで幕は下りる。この経過にサルトルの実存哲学のエッセンスが凝縮されており、戯曲のドラマ性を持ってそれを膨らませて観客に魅せるのだ。それに加え、善を行おうとする無意味さから道徳性やキリスト教の脆さも描いてみせていた。結局サルトルは世の中どんなに祈ろうが神ではなく人間ありきなのだと言っていて、無宗教、あるいは<良いイベントだけ見繕う宗教>な感がある我が国の国民性からしてニーズがある本ではないだろうか。分裂気味なゲッツはとても日本人的なのだった。

サルトルが表現したかったエッセンスはもちろんこの一作だけでは理解不足なのは否めないが、実存主義とはなんたるか、サルトルとカミュの決別以来の作品の読み比べなど、今後の両者の作品に対する読書のディレクションはガッチリ掴めた。今後の読み比べが楽しみだ。



3.7 なむなむ!


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.02 2010 【本:言語芸術】 comment0 trackback0

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