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J・G・バラード 『千年紀の民』  訳 : 増田まもる

千年紀の民


ヒースロー空港で発生した爆破テロ。精神分析医デーヴィッド・マーカムはテレビ越しに、事件に巻き込まれて負傷した先妻ローラの姿を目撃する。急ぎ病院に駆けつけたが、すでに彼女の命は失われていた。その「無意味な死」に衝撃を受けて以降、ローラ殺害犯を捜し出すためデーヴィッドはさまざまな革命運動に潜入を試みるが…。新たな千年紀を求め“革命”に熱狂する中産階級。世紀のSF作家バラードの到達点。  (BY BOOKデータベース 東京創元社 海外文学セレクション)


本が好き!〕からいただいた献本です。・・・・・一日遅れちゃいました^^;;;


主人公であり精神分析医デーヴィッド・マーカムはヒースロー空港で突如発生した爆破テロをテレビで目にする。が実はその被害者の中に先妻ローラがおり亡くなってしまうのだ。マーカムは彼女を殺したテロリストを探し出すために革命運動に参加してゆくのだが、その先にあるものは何だったのか?というのが大まかな祖筋。ヒースロー空港というからにはイギリスが舞台なのだが、これが〔中産階級〕の為の革命なのである。イングランドというと階級制が色濃く労働階級を描いたものも多いが、中産階級となると少なくとも僕の記憶ではあまり読んだことがないのでそういった観点からも興味は尽きない本だった。

またバラードというと自分の中では勝手にSFの枠組みに入れてしまっていたのだが、なんのその、本書はSFというよりもむしろ文学的であった。なかなかの長編なので少し疲れてしまう部分も正直あるが、とても抒情豊かに書かれていて詩的な表現力は恐ろしいくらい心に残ってしまう。それにドラマチックな文章でもあるし、ニヒリズムや焦燥感なども内包していて奥行きのある雰囲気がたまらなく魅力的である。もし本書の内容が無味乾燥なものだったとしても、バラードの文章だけで一杯イケちゃうのではないだろうかというくらい。

内容からするとこれが9.11のテロを受けて書かれたという点が明らかであり、バラードの関心がある箇所は読んでいるとおのずと理解できるであろう。しかし、バラードが描きたかったのはこういうテロリズムを通じて〔無意味性〕を描きたかったようだ。テロや連続無差別殺人などがあると犯人の過去や環境を持ち出すが、そんなことはこういうものとは次元が違うとバラードは言っているのだ。何かをやってみても世界は無意味性に行き着いてしまう。しかし、何かが生まれるのもまた無意味性からなのだ!とバラードは圧倒的な思弁と筆致で認識させてくれたのだ。

最後に一つ読んでて興味をそそられたものを紹介すると、主人公である精神分析医デーヴィッド・マーカムの心理学である。精神分析医なのだから心理学を使うのは当たり前なのだが、これがフロイトやユングなどの誰でも聞いた事あるものではなく、アドラー心理学を扱っている箇所だ。僕も中盤まで全く知らなかった心理学なのだが(^^;)、読んでいるうちに主人公の心理学の一貫性に気付いてもしかしたらこれは作者の創造の産物じゃないなと思って調べてみたら案の定だったというわけだ(苦笑)今後本書を読む方がおられればこのアドラー心理学の理論を踏まえて読むと、また読み方も変わってくると思うのでご参考までに^^



4.0 なむなむ!



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.26 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment4 trackback0

comment

読書系女子
>何かをやってみても世界は無意味性に行き着いてしまう。しかし、何かが生まれるのもまた無意味性からなのだ!

なるほど~
無意味というものも一つの意味なのかもしれないですね・・
(…と書きつつワケがわからなくなってきていますが^^;)
2011.03.01 10:50
くう
心理学ですか。
結構興味があって、書籍を荒らしている状況ですが、
アドラー心理学の本は読んでないですね。

今度読んでみようかなぁ。

あぁ、こうやって積ん読が増えていくんだな…(^^;)
そう思う、今日この頃です。
2011.03.01 23:03
チルネコ

>読書系女子さん

そうですね、こういう哲学的なものいいは何がなんだかわからないようでいて、なんとな~くはわかるんですよね(笑)でも世の中矛盾で満ちてるってのは理解できる気がします^^
2011.03.02 13:55
チルネコ

>くうさん

おぉ~心理学関連本も読まれてるんですね~。大学でちょっと嗜んだ程度ですが、心理学に興味はあります^^恥ずかしながらアドラー心理学ってのは本書で興味が湧いたレベルですが^^。

そうですね、積読はこうやって本の連環がなくなりませんよね(笑)僕もまた本棚買うことになりましたww
2011.03.02 13:58

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