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朽木ゆり子 『フェルメール 全点踏破の旅』

フェルメール全点踏破の旅



日本でもゴッホと並ぶ人気を持つ十七世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメール。その作品は世界中でわずか三十数点である。その数の少なさ故に、欧米各都市の美術館に散在するフェルメール全作品を訪ねる至福の旅が成立する。しかもフェルメールは、年齢・性別を超えて広く受け入れられる魅力をたたえながら、一方で贋作騒動、盗難劇、ナチスの略奪の過去など、知的好奇心を強くそそる背景を持つ。『盗まれたフェルメール』の著者でニューヨーク在住のジャーナリストが、全点踏破の野望を抱いて旅に出る。  (BY BOOKデータベース  集英社新書ヴィジュアル版/2006.9.20)


この本の存在は黄色いお店で手にとってみるまで知らなかったんだけど、オールカラーでタイトルにあるようにフェルメールの全作品が写真付きで載っているからお得だ。それぞれの作品の解説と共にその絵自体も見比べられるのでなかなか読みやすいフェルメール本だと思う。いかんせん新書サイズなので載っている写真が少し小さいのが残念だが、そこは所持しているフェルメールの画集などでカヴァーしておいた(笑)

まずフェルメールは非常に寡作で、一般的に現存する作品は37点だと言われている。その中でも真作か贋作かと意見が分かれていたりもするので、フェルメール作品は34点だとか30数点だとも言われており、真相は竹林の中だ。だが絵画についてまだまだ浅学な僕にもここには持論があって、僕の中では〔フルートを持つ女〕と〔聖プラクセデス〕は疑わしいのではないかと勝手に勘ぐっている(笑)まず〔聖プラクセデス〕はフェルメールらしさが全く感じれない。宗教画のようなので初期の作品だろうけど、それにしてもタッチやフェルメールの雰囲気が皆無な気がする。〔フルートを持つ女〕は人物像やその佇まいなんかはフェルメールっぽいといえばそう見えるのだが、こんな構図でこんな光の使い方をするのかな?と思ってしまう。本書に書いてあった「フェルメールが描きはじめたが、彼の死後力の劣った画家、おそらくヤン・クーレンビアが仕上げたのだろう」というようなほかの画家が仕上げた説ならなんとなくではあるが納得できるのだが。。。

おっと、少し本書の紹介から脱線してしまったけど(^^;)、この著者・朽木ゆり子はフェルメールないし絵画に関する専門家ではなく、どうやら好きが高じてフェルメールを研究し始めたようで、本来はジャーナリストや翻訳家としての面が大きいようだ。だが、本書は『フェルメール 全点踏破の旅』というだけあって、フェルメール全作品を網羅している。専門家ではないのでフェルメールの専門家や絵画評論家、他のフェルメールに関する著作などに頼って記述されている部分も大きいが、それぞれの展示場所やその特性、その絵の寓意、そしてジャーナリスティックな面白い持論などが書かれていて、フェルメールの絵を見る前にこれ一冊だけでも読んでおくと見方が随分変わるだろうなと思う。

例えば〔デルフトの眺望〕をとってみると、

デルフトの眺望2


この作品はカメラ・オブスクーラ(暗箱)の助けを借りて描かれていると推測されているが、風景画レンズに写ったままを描写をしたわけではないと言われていたりする。また、フェルメールは建物の高さや重なりを微妙に操作して、空と水の間に細い帯のように建築物が並んでいる効果を出した。さらにX線写真から修正箇所も判明していて、フェルメールは写実的に描写したのではないということがわかるのである。写実的なようでいて写実的でない。それでこそフェルメールだ。

また、この絵をあのプルーストも絶賛しており、「世界でもっとも美しい絵」との賞賛を送った上に、『失われた時を求めて』で登場人物の小説家に「小さな黄色い壁の絵の具をいくつも積み上げて、文章(フレーズ)そのものを価値あるものにしなければいけなかったんだ」というセリフを言わせており、その後この登場人物はある言葉を残して展覧会場で発作を起こし死んでしまうのだ。プルーストは病床からこの展覧会を見に行きその後『失われた時を求めて』を書いて他界したというから、この登場人物も行動はプルーストのフェルメールに対する賞賛以外の何物でもないだろう。

だが、僕が個人的に好きなフェルメールの絵というものはもう確固たる地位を僕の中で築いてしまっている。実物は見たことないが、ダヴィンチやラトゥールやモローなどといった好きな画家の中でも、特に気に入ってるフェルメールの作品が2点あるのだ。それは〔地理学者〕と〔天文学者〕である。フェルメールといえばやはりトローニーである〔真珠の耳飾の少女〕とか〔牛乳を注ぐ女〕など、女性の内面が浮き出てくるような絵の方が人気があるだろう。僕も〔レースを編む女〕を直で観たときには、こんな小さな額縁に嵌ったもっと小さな絵が、女性的で可愛らしい効果を生むと共に、直向きにレースを編む女性に親しみやすさと優美さすら感じてしまったくらいだ(ちなみにこれにはダリによる贋作もあるw)。

もちろんフェルメールが描く数少ない男性の被写体だからという理由でこの二つを好きなのではない。嫌、少しはあるかも知れないが、女性の被写体描写にはないものがここには詰まっているからなのである。


地理学者

天文学者2


この2点を見比べるととても似通ってる共通点が見えてくる。ます被写体も似ているし構図も似通っている。家具の配置や小物の類似、全体的な光に色合いは違うが、光の差し方は同じような陰影なのである。しかし、何度もじ~っと凝視して見比べていると、そこから読み取れるものは違ったものが浮かんでくるように思う。

実は描かれている人物は共通の人物だと思われていて、両者とも科学者・レーウェンフックという人物であるらしい。またレンブラントやレンブラントの弟子・ダウも好んで書いた「書斎の学者」という主題であり、これも共に共通するものだ。だがこの作品2つは対の作品ではないのである。これだけ似通ってる要素があるのに、別々であるというのは不思議で魅力の一つだろう。

〔地理学者〕のほうはこれぞフェルメール!といったフェルメール的な作品。光が左の窓から射し込み、地理学者は作業の手を止め窓の外を眺め何かに思い耽っている。何に思いを馳せているのかは見るもの次第だと思うが、この光の射しかたや光の充満具合から、この考え事によって後々何かを閃くような、または爽快な気分を感じさせるような雰囲気だ。また、フェルメールが地理学者や天文学者を描くことでその時代の科学的なものにも関心があったことがわかる。

〔天文学者〕のほうは地理学者と違って左の窓から同じような光の射しかたをしてはいるものの、全体的に暗めなトーンになっている。これはたぶん天文学者ということで夜の月の光をイメージしてるようにも観れる。その為、地理学者では爽快感なるものを感じたが、天文学者では何か叡智すら感じる雰囲気なのだ。光の射しかたがこうなので、全体的にソフトになっているのも面白い。「天球儀」に右手をかざし何を考えているのだろうか?(ちなみに地理学者のものは地球儀)。また机上に置かれている本も実在するものでページ数までわかっており、本の後ろの置かれている器具は天体観測用のアストロラープだという。こういった小道具を細部まで繊細に描いているのはフェルメールの全盛期の作品で、後期では細部はぼかしたものも多く、この2点はそういった点でも好きなのだ。


このように自分の作品に対する想いと書かれている情報とを読み比べてみるのも面白い。また基本的な情報量ではあるが、ガイドブック的な役割を果たしてくれもするだろうし、解がめぐりの旅のお供に一冊持参するのもいいだろう。全点網羅されているのでフェルメール本として様々な楽しみ方ができると思うので、お勧めの一冊だ。



4.1 なむなむ!



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.17 2011 【本:絵画/芸術】 comment3 trackback0

comment

チルネコ
いえいえ、コメントありがとうございます!

別に内緒じゃなくてもいいのに~(笑)

でも、細かいところまで読んでくださって嬉しいです^^w

登美彦氏好きなのでたまーにこういう遊び入れてるんです(笑)
2011.05.17 22:22
chat_noir
こちらの本は気になりつつ、まだ手に取っていません。
参考にさせていただきました。(購入することになりそうです;笑)

一時フェルメールに嵌った時期があり、彼女の本も読みました。
『盗まれたフェルメール』もなかなかおススメです。
しかし全点踏破とはうらやましい限りです。
あと、フェルメール研究で著名な方として、小林頼子氏のすばらしい著作の数々があります。(ご存知かと思いますが)
個人的には小林氏の研究はかなり緻密ながら一般人にも分かりやすく魅力を伝えてくれた記憶があります。
思わず大型本の『フェルメール論―神話解体の試み 』まで購入してしまいました(画集として楽しんだものの、未読;汗)。
お手軽なものがいくつか出ていますよね。
2011.05.19 23:55
チルネコ
>chat_noirさん

新書サイズなので載ってる絵や写真は小さいですが、オールカラーなので見やすいとは思います。ご感想楽しみです~w

『盗まれたフェルメール』面白そうですね。本書でも少しだけ言及してました。小林頼子の著作は本書でもものすごく参考にされていて、お名前も著作も何度も登場してましたよー(笑)実はまだ未読なので読んでみたいと思ってチェックしました^^大型本は置き場所がなくて敬遠気味ですが、引越しした暁には置く場所確保できるといいなぁ^^。。
2011.05.20 22:29

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