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スタニスワフ・レム 『ソラリスの陽のもとに』  訳 : 飯田規和

ソラリスの陽のもとに


菫色の靄におおわれ、たゆたう惑星ソラリスの海。意見なんの変哲もないこの海だったが、内部では数学的会話が交わされ、みずからの複雑な軌道を修正する能力さえもつ高等生物だった!人類とはあまりにも異質な知性。しかもこの海は、人類を嘲笑するように、つぎつぎ姿を変えては、新たな謎を提出してくる・・・・・思考する「海」と人類との奇妙な交渉を描き、宇宙における知性と認識の問題に肉迫する、東欧の巨匠の世界的傑作。   (BY 背表紙紹介文  1977.4.30  ハヤカワ文庫 刊)


最近「スタニスワフ・レム コレクション」として『ソラリス』『天の声・枯草熱』などが新訳でだされたが、積んでいたこのハヤカワSF版で読むことにした。というのも新訳の『ソラリス』は検閲で削除された部分が復元されたとはいえど、「直訳すればいいってもんじゃない」みたいな意見が多くあって、こちらの旧版のほうが作品としての出来が良いみたいなのでこちらでいいかなと(笑)

この作品の表向きのテーマを簡単に言うと、というかこういうしかないと思うのだが、これはファーストコンタクトものである。SFでは普遍的なテーマである未知との遭遇モノ。このテーマのものならSF好きでない人でも何作かパッと頭に浮かぶ作品があるのではないだろうか?しかし、なぜこの作品が今でも必ずといっていいほどSFランキングの上位に食い込んでくるのかということを考えると、これが単なるファーストコンタクトものではないと察するに易しい。

ファーストコンタクト=未知との遭遇と聞いてまず思い浮かぶのが異星人(宇宙人など)との接触だろう。そして、この異星人は「敵なのか?味方なのか?」というように、人類が勝つか、異星人が勝つか、共存かという紋切型の図式が考えられる。が、作者も言っているようにこれはあまりに単純に図式化されすぎているということ。かくいう僕も素直じゃないので「いつも宇宙人に勝ったり負けたりの争いばかりだな」と思ったものだが、レムはそのモチーフを発展させて、今でも斬新ととれる作品へと発展させてしまったのだ。予断だが、こういう考えをしていると、異星人を【難民】として扱った『第9地区』という映画は、斬新な観点で異星人を捉えたにも関わらず、最後には図式化された型にハマってしまったという点で、とてつもなくいい位置につけた作品だったんだなという想いが強くなる。

じゃあレムの何が凄かったのか?というと、根本から違ってて、まずは「未知なるもの」を【海】というものにしてしまったことだ。【海】は地球にもあるので誰でも知ってますが、それが凄いんです。だって未知なるもの=海=既知なんだから。未知が既知になるのが常だけど、これは既知が未知になるんだから、登場人物も読者もはじめは必ず混乱してしまう。また、未知との遭遇というよりもむしろ「謎」との遭遇といったほうが適切で、これは本好き嫌いに関わらず、好奇心旺盛な人間の大好物なんだから、この作品のテーマは素晴らしく斬新なんだと思う。

そしてこの惑星ソラリスに存在する得体の知れない【海】ってのは一体なんなのか?と登場人物たちも詮索し研究するのだけど、実は本書の内容はそれに終始されれるだけなのだ。話の流れはこの【海】の解明と【海】と関連するであろうハリーとケルビンのラヴロマンスだけなのだ。もしかしたら退屈な人にはとてつもなく波がなく味気もない作品に映るかも知れない。なにせ、大まかな筋はこの2点だけな上に、哲学的で心理的という形而上なことばかりなんだから。だが本書はそれが長所であり全てで、作者の思想が破裂しそうなくらい詰まっている。これが書かれた時代背景というのも否めないが、米SFへの回答としての東欧SFとして捉えても読んでも面白い。ただ人類は「謎」という魅力から逃れられないことを考慮すると、本書は本当にいつまでも色褪せることはないと言える謎に満ちたSFなのは間違いない。

また、本書が一層読みたくなったのは森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』が本書にインスパイアされて書かれたということもある。ペンギン~にも形や規模は違えど得体の知れない【球体の海】が重要なガジェットととして使われていた上に、ソラリスでのハリーという既知=未知に対する、ペンギン~でのペンギンという既知=未知。そしてラヴロマンスに対するあおやま君のほのかな恋物語。登美彦氏が何度となくソラリスを繰り返し読んだという、その影響がどう『ペンギンハイウェイ』に反映されていたのか深く理解できた。換骨奪胎というと言い過ぎかも知れないが、少なくとも相当な面でインスパイアされたのは間違いない。そこかしこに『ソラリス』の意思が横溢してたのだから。登美彦氏に多大な影響を与えてくれたという点だけでも、登美彦氏マニアな僕にとっては感謝すべき作品なのであった。ホントなむなむ!



4.3 なむなむ!



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.05 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment0 trackback0

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