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大門剛明 『罪火』

罪火


伊勢神宮奉納全国花火大会の夜に殺人事件は起こった。被害者は中学2年生の町村花歩。犯人は元派遣社員・若宮忍。花歩の母親、町村理絵はかつて若宮の恩師であり、一人暮らしの彼を家族ぐるみで気遣っていた。なのになぜ、若宮は凶行に及んだのか―。やがて事件は意外な展開をみせ、若宮と理絵に予期せぬ結末が訪れる…。人は罪を本当に許すことができるだろうか。自ら犯した罪を心から悔い改めることはできるのか。横溝正史ミステリ大賞+テレビ東京賞W受賞で話題を呼んだ『雪冤』を凌ぐ、衝撃の問題作。   (2009.12.22  角川書店)


『雪冤』で第29回横溝正史ミステリ大賞を受賞した大門さんの『罪火』。個人的にはあまり好んで読まない社会派ミステリだったが、『雪冤』は社会問題に深く切り込むと共に、ミステリとしてもどんでん返しのある総合的に質の高い作品だったと思っている。もちろん本書も社会的問題をはらんだ作品であり、読む前から期待値は高い。


『雪冤』では〔死刑制度〕の是非と〔冤罪〕という社会的テーマでもって書かれていたが、今回の『罪火』は被害者と加害者を公平な立場でもって話し合いの場を持たせる【修復的司法】というものが大きな軸になっている。本書を読むまで【修復的司法】という言葉を耳にしたことすらなかったのだが、これは「犯罪に関わる全ての当事者が一堂に会して犯罪の影響とその将来への関わりをいかに取り扱うかを集団的に解決するプロセス、又は犯罪によって生じた害を修復することによって司法の実現を指向する一切の活動を言う」(by WIKI)ということらしい。簡単に言ってしまうと被害者の感情と加害者の想いが話し合いの場によって相互理解し合えるように設ける場ということだろう。



【修復的司法】がそういうことなので、本書には被害者と加害者がいて、どちらの心情も比較的丁寧に描かれている。それは最初から最後まで顕著だが、まず始めに軸になる殺人事件に対する真相、つまり犯人が誰であるかが描かれている。つまり倒叙の手法をとっているのである。ラストを読むと一層この手法のよさが滲み出てくる作品となってるのだが、倒叙にすることで一回目読むのと二回目読み返すのとではまた違った読み方が倒叙部分で発揮される。本書の場合これが最善のミステリ的手法の選択だったのではないかと思えるほど印象的な部分だった。また終盤で披露されるどんでん返しもなかなかだ。盗んだ○○の文字の書き換え部分に関しては、間接的な伏線はあれど直接的な伏線などないので読者は推理できはしないが、これはそういう類の内容ではないのでOKだろう。他の部分では(シートの箇所など)きっちり伏線が張られていて、その伏線がラストに実を結ぶ際にはグッとくるものがあり、気分良くページを閉じられるわけではないが、救いがあって静かな余韻を残してくれると思う。



加害者も被害者も、登場人物はきっちり描かれているが、少し人物造詣に難があるなと感じた。特に加害者の人物に違和感みたいなものがあって、苛立たしい心理描写や行動とは別に、突発的すぎる行動がイマイチ受け入れがたい。実年齢は36歳として描かれているが、心を病んでいるとはいえとてもじゃないが20代にすら思えない。このような人物造詣ならば、この人物に対する精神疾患などの描写をもっと綿密に描かないと説得力にも欠けるのではないだろうか。


だが、『雪冤』と共に本書もまた個人的には質の高い作品だという評価なのは間違いない。【修復的司法】というまだ浸透してない題材を用いて、被害者感情と加害者の意識の推移などを正面から捉えていたし、極端に一方加担するのではなく、公平な目線で描いてくれてる。また、ミステリとしても一定の水準にはあるので、社会派ミステリとしての評価も上々だと思う。なによりラストの舞台が花火会場であるように、仕掛け花火が上がったようなラストが罪火を包んでくれたような余韻を齎してくれるのだった。




3.8 なむなむ!



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.06 2011 【本:社会派/社会】 comment0 trackback0

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