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クリストファー・プリースト 『逆転世界』  訳 : 安田均

逆転世界


「地球市」と呼ばれるその世界は、全長1500フィート、七層から成る要塞のごとき都市だった。しかも年に36.5マイルずつレール上を進む可動式都市である。そんな閉鎖空間に生まれ育った主人公ヘルワードは、成人を迎えた日に初めて都市の外へ出ることを許された。だがそこで彼が見たのは…月も太陽もいびつに歪んだ異常な光景だった。英国SF協会賞に輝く、鬼才の最高傑作。    (1996.5.24  創元SF文庫)


ここ最近のプリーストの作品『双生児』『奇術師』(映画『プレステージ』)の感想なんかを読んでいると、幻想色が強い作家さんなのかなーと思いきや、本書はガチガチのSFだった。SF熱が沸点に達している今、こういうSFらしいSF作品を読めると嬉しいが、この作者は英国の作家である。SFはもちろんミステリにおいても英国作家の一筋縄ではいかない作風が大好きだ。しかも本書はまさにそういった点においてどんぴしゃで、SF的なパラダイムを打ち壊すかのような奇抜な作品だったのである。

荒廃した土地に一つの巨大可動建造物がある。その中には人々が住み節度あるコミュニティが形成され、特に不自由ない暮らしをしている。だが、この巨大建築物は〔可動式〕であり、荒廃した土地を移動できるようになっているのである。それはなぜかというと、いつもその建築物の数マイル先に〔最適線〕という基準線があり、その戦に着かず離れず着いてゆかねばならない。これはそうしなければならないとギルドによって昔から受け継がれてきた至上命題なのである。

主人公ヘルワード・マンも成人してギルドに入るまでは、建築物の外に出たことはなく、閉鎖的な都市内で教えられてきた事象以外何もしらない。なので、「なぜ最適線に向かって進まねばならないのか?そもそも最適線ってのは何の為にあるのか?」すら知らない。最適線に向かって都市を進めるため、〔牽引ギルド〕があったり〔未来測量ギルド〕があったりするのだが、主人公も読者も始めにドーンと提示された退廃的な世界にある巨大建築物に不可解で謎な点が多すぎてなにがなんだかわからなくなってしまうのだ。「この世界はどうなってるんだ?」という風に。

主人公と読者は同じ事象しか知らされないので、主人公とともにこの世界の事柄を少しずつ知ってゆくことになる。だがこれが謎へのヒントが一つ一つ提示されてゆくような、ちょっとしたミステリ的構造を持った流れとなっているので、SFとともにミステリ的仕掛けも楽しめてしまうのだから面白い。この謎に対する結末だが、これはエリザベスが○○から来たという説明があったとき、勘ぐってたものが確証へと変わったのでミステリ的しかけは自力で解けてしまった。だが、先日読んだレムの『ソラリスの陽のもとに』のテーマも一種の同系統作品だと思うのだが、○○の変革のテーマ(←未読の方の為に一応伏せておく)には良質な作品が多い気がする。そりゃそうだろう、既存の○○をぶち壊してしまうような思考実験~立証とは、アインシュタインもダーウィンもニュートンもそこを疑問視し覆したからこそ名前が残っているんだから。このテーマを扱った作品はSFだけでなくてもチェックしてゆかねばならない。

だが、本書は○○の変革というアイディアだけでここまでSF然するわけないと思ったのだが、あとがきにあるように本書にはとてもアイディアが詰まっているのだ。都市外の世界にある歪みはアインシュタインの相対性理論だし、事象の地平線はいわずもがな。科学に対する作者の敬意が感じられる上に、少しあっけなく真相が明かされるとはいえ語りも上手い。なによりこの軸のアイディアにはミステリ的しかけよりもやられた感が大きい。あまりにも見事だ。

こう考えたことはないだろうか?自分が見ている空の〔青色〕という色は、絶対に他人が見てる〔青色〕と同じなのだろうか?と。もしかしたら他人がいう〔青色〕というのは、実は自分がいう〔赤色〕に見えてて、それをただ〔青色〕という認識でもって表現してるだけかも知れない。僕の〔黄色〕はある人には自分的の中での〔白色〕のことで、ある人が〔緑色〕といったものは、自分の中では〔茶色〕に見えてるものかもしれない、と。街にある木々に「緑がいっぱいで子持ちいいねー」と言っても、相手には茶色に見えてるかも・・・・・そう思うとぞっとするが、本書を読んだ方はそれとなくありえない話ではないと思ってもらえるのではないだろうか。




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