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マイクル・Zリューイン 『A型の女』

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私立探偵サムスンシリーズの第一作目にあたる本作。ハードボイルドの中でもネオ・ハードボイルドと呼ばれていたようだが、真っ向から社会的問題と向き合うのではなく探偵自身の問題をフィルターとして社会を描く、というのがその定義だとすればこの作品はネオ・ハードボイルドなのでしょう。しかしフィリップ・マーロウもそれに当てはまるし、イマイチハードボイルドとの差異にピンときていないのが正直なところ。内省的に向かっているということなのでしょうか。

「生物学上の父親を探してほしい」という少女の以来のもとサムスンは解明に乗り出すのだけど、勝手に作り上げていた人物像とのギャップに戸惑った。知性派と形容されているので鋭い洞察力をもって解決するのかな、と思ったがなんのその。彼はアメリカにも日本にもいそうな至って普通の人物。マーロウと比べるとタフでもなくやくざな所もない、拳にものをいわせるなんて似合わない。むしろ依頼の進捗が滞った時には「依頼人に忠実ではない」と罪悪感を感じてしまうような好感が持てる人物なのだ。

しかし彼は自らの規範と道徳を秘めておりそれは揺らぐことがない。揺らいでしまったら探偵は廃業だろうし、あの小切手の申し出も感情に従って受け取っていたはずだ。そういう意味では精神的にタフなのだろう。一方で何かを決断しなければならないとき、彼はいちいち自分の選択肢を口に出すという子供っぽい一面もある(冒頭からしてそうなのである)。思うにいちいち口に出すことで彼はやるべきことを確認しているのだと思う。そうやって子供っぽい部分とタフな部分とで折り合いをつけつつバランスを保っているように映った。だから地に足がついているのではないのだろうか。それらを鑑みるとハードボイルド的なものを取り除きハードボイルドに仕立てあげた、という箇所がネオ・ハードボイルドたる所以なのかなというところに落ち着ける。

話の展開は上記の依頼を解く過程も真相も、今となっては及第点といったところでしょう。察しの良い方ならば早い段階で全体像が見えてしまうと思う。読むべきは心優しいサムスンが多様な人物と関わり四苦八苦して真相まで辿り着く様。彼のフィルターを通しての出来事と内省的な心情の機微を我々が見詰めてあげることだ。そして探偵事務所にとある人物が訪ねてくるラストシーン。先の尖っていない針で胸を射されたような、痛みより切なさにチクリと反応してしまうような。おそらく彼が目指したハードボイルドはこのシーンにもあって、ハードボイルドというジャンルの中において一線を画してみせたかったのだろう。そして彼の努力は見事に実っているといっても差し支えないだろう。続編も読み進めたい。



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.01 2016 【本:ハードボイルド】 comment0 trackback0

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