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藤井太洋 『Gene Mapper -full build-』

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舞台は2037年の近未来。インターネットが崩壊し代替としてトゥルーネットという新たなネットワークが発達し、コミュニケーションの大半を拡張現実(AR)でとっている。世界の人口は120億を突破。故に食料は完全有機農法で作る蒸留作物が占めているのだが、完璧であるはずの蒸留作物に問題異が発生してしまう。遺伝子工学が花形職業の世界で、その遺伝子設計に関わった遺伝子デザイナー(ジーン・マッパー)の主人公は、遺伝子崩壊なのかそれとも別に原因があるのかを探るため奔走する。

設定されている年月からも想像できる通り比較的すぐそこにある未来が描かれていて、現在の延長上の世界といっても差し支えないでしょう。新しい技術的概念があったりいささかSF的ガジェットが進んでいるかな、というくらいで、今生きる我々の世界にもそれらの萌芽はすでに出ている。しかし逆説的に言うならば、平和ボケしていない読者にとって恐怖感を思い出させる部分でもある。何故なら作中は現在と地続きとしてあり、作中の問題は作中だけのものだけではない、という想像力が働いてしまうから。小説でありながら当事者感覚で読んでしまう、作者がそれを狙い撃ちしたのであれば、デビュー作としてはしっかりと的を得たのでは。

作者はどうやら9.11の事故によって外側の人間から内側は見えず、一部の者によって隠蔽されているということに危機感を感じ、フィクションという形に己の思考を落としたようだ。だから、作中でも主人公たちは巨大な権力の想うままにさせず、世間へそこにある危機を知らせようとした。動機として納得のいくもので、彼の想いはちゃんと作中に活きている。そういった部分でも良い小説だ。扱うテーマも技術の暴走であったり、扱う者の倫理観、社会風刺、テロリズム、テクノロジーの二面性、など一考すべき事柄が多く、ただSFしてみましたという域ではないのも嬉しい。

また、ストーリーも展開もスピードがあって読了に時間を要しない。スリリングだといっても大袈裟ではないくらい。惜しむらくは人物造形の割に人物が生きていないこと。主人公が受動的すぎるし、他の主要人物たちも、俳優でいうところの棒読み、といった印象が拭えない。ARも、作者は理解して書いているがそれが読者にはイマイチ仕組みが伝わってこないのも残念だ。

しかし彼はこれがデビュー作なのだ。ここまで書けたら立派だと思うし、後の著作の反響をみれば飛躍しているのだろうなとも感じる。なんといっても彼の出身地は個人的に所縁があるので、粗の一つや二つあったって肩を持ってあげたい気もする。時には小説の評価に私情を絡めても許されるよね。


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.03 2016 【本:サイエンス/フィクション】 comment0 trackback0

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