スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
.-- -- スポンサー広告 comment(-) trackback(-)

ドン・デリーロ 『コズモポリス』

20160109215901e2e.jpg




『コズモポリス』は一見スペキュレイティヴフィクションのように思えてしまうけど、一読するとスリップストリームに入るのだろうなと感じるような作品(ジャンルの境界が曖昧で現代的とも云える)。思弁と観念の乱れうち。形而上的な会話と対立する概念、容易な理解を阻む抽象的なセリフの連続に目眩を起こしそうになる。語られる文章も決して読みやすいとは言い難く、きっちり紐解こうとするとハードな読書体験となること間違いなし、と勝手にお墨付きをしておきましょう(マルクスの『共産党宣言』のパロディといわれてもピンとこないし)。少なくとも僕はそうでした。

ストーリーは平々凡々でその行動は奇妙、若くして時代の寵児となったエリック・パッカーが超ハイテクリムジンで金融取引をチェックしながら床屋を目指す(勿論なぜ床屋?というのにもしっかり意味がある)。その中でエキセントリックな主人公の心理的な変化が、ガラッと雰囲気の変わる一部と二部で描ききられている。彼は肉体的実感を伴う行為、暴力やセックスや床屋といった強い刺激を物理的な痛みに求めて倒錯的になっていく。それはリアルという日常感覚のズレから生じる歪みのようで、生の実感を獲得したいがためのもがき・あがきとしてのメタファー。舞台が近未来の(現代より少しハイテクが進んでいる世界)ニューヨークなのだけど、繋がりすぎた世界と揶揄される現代の危機感と同様のテーマがそれによって表現されている。人間の本質を正面から捉えようとする様、そしてそれを成し遂げてしまっている(そう思える)所が、他と一線を画す読みどころだろう。

文章は先に書いたように容易に書かれていない上、観念が表面張力の如く溢れんばかりに注がれているから危なっかしいし複雑だ。しかしそのまま率直に文章へ貼り付けると小難しくなる思弁の吐露を、デリーロは絶妙な筆でユーモアへとすり替えてしまうのだから細胞が興奮してくるような読書感覚を味わえてしまう。そのユーモアあるいはギャグにまで昇華しすり替えられている事に気付かずに通りすぎると、随分と損をしてしまう気がする。もしかしたらもっと素晴らしい読み方がある可能性は大いにあるのだけれど。

現代米文学作家群でジョナサン・フランゼンやブレット・イーストン・エリス、ディヴィッド・フォスター・ウォレス、フィリップ・ロスらと共に読まなければというある使命感のような小説に対するオブセッションがあるのだけど、その一人であるデリーロの作品は確かな手応えがあった。この感触。エリック・パッカーではないが、アメリカ文学の生を体験出来たといってもよい。それはひとえにデリーロの現代に対するステートメントが明確だったからだと考えている。


ブログランキング参加中です → にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
関連記事
スポンサーサイト
.09 2016 【本:絵画/芸術】 comment0 trackback0

comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する

trackback

trackbackURL:http://kurogokegumo.blog135.fc2.com/tb.php/198-b9534e84

プロフィール

チルネコ

Author:チルネコ
読書をライフワークとしております。読むジャンルは本のジャンルは基本的に小説です。特に文学、ミステリ、SFを好み。何かお薦め本があればご指南ください。リンク・コメント・TBも大歓迎ですのでどうぞよしなに^^

カレンダー

<< 06
2017
>>
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 -

訪問者数

ブログランキング

ブログランキング・にほんブログ村へ

書評サイトさん

読書&鑑賞メーター&音楽メーター

チルネコさんの読書メーター チルネコさんの読書メーター チルネコの最近読んだ本 チルネコさんの鑑賞メーター チルネコの最近観たビデオ
http://ongakumeter.com/u/1347

MY リンク

ブログ内検索+用語検索

ブロとも申請フォーム

ブロとも一覧

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。