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瀬名秀明 『デカルトの密室』

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ミステリタッチのSF であったが、なかなか手懐けるのが難しい小説だった。何も難解というだけではなく、この本自体が容易く読むことを拒んでいるのだ。タイトルからして哲学的な香りがするが、仄かに香るどころかデカルトの『方法序説』が香水つけすぎなマダム並みの匂いを始終放ってくる。それだけでも手強いが、その他にも「チューリングテスト」「フレーム問題」「中国人の部屋」「デカルト劇場」「ウェイソンテスト」等の言葉で溢れ返ってもいる。これだけでSF 好きでない読者は踵を返しそうだが、安心してください。は、、、ハッキリとこれらの説明は作中でなされているのでしっかり作品と対峙すればなんてことはないでしょう。

それよりも問題は『方法序説』からくる哲学的、形而上的なテーマの方。テーマはとてもシンプルに「人間と機械の違いは何か」であり、ロボット工学の研究者・ユウスケと恋人で心理学者のレナ、そしてユウスケが造り出したヒューマノイド・ケンイチを軸に、ロボット(AI)に知能は、つまり人間以外に自我はあるのか?あるのであればその差異は?ということを考察している。が、これが厄介で作者のペダントリー溢れる内容と筆致が、論理的で難解さを助長してしまい、飛び交う会話が右から左へと留まることを知らなくなっちゃう。僕自信も作者のイメージを共有できてない部分があるなと感じて無念さも感じてしまった。

そしてもう一つ、どうにかならなかったのかな、と思う箇所が語りにある。冒頭から読み進めて直ぐにおやっ?っと思い、これは誰が語っているのだろうかと分からなくなってしまう。なぜなら本書の語りには「僕」の視点が多用されるのだが、この「僕」というのが、ユウスケでありケンイチでもあり、はたまた誰それでもあるのだから。それら複数の「僕」の視点がなんの前触れもなく入れ替わり、読者はその度に物語を見直す必要に迫られてしまう。加えて一人称も三人称もあり、読みにくいこと甚だしい。また、これら複数の視点のためにプロット自体が不必要に複雑になってしまった嫌いがあり、魅力的な内容であったからこそ残念に思う。

しかし、この「僕」視点が入り交じる叙述の、作者の意図は汲み取れる。本書のエッセンスは「人とロボットの違い」や「自我」にあるのであるから、ユウスケとケンイチの語りの境目を「僕」で統一することで、どちらが製作者(ユウスケ)とそのプログラム(ケンイチ)の自我なのか不明瞭にし、渾然一体としている様子を表現したかったのだろう。その気概は買うが作家さんの自己満足だけでは読者は付いていけないことを考えてくれないといけない。内容的には、SF 的にもミステリ的にも(なぜロボットは人を殺すのかというホワイダニット)魅力的なだけに口惜しい。

ロボット(AI )も作中に名の登場する名作SF 作品群と比べると毛色が違っている。だが、それはとても良い面だと思う。とてもナイーヴで感傷的なケンイチ。もしかしたらこれがヒューマノイドらしくない描けてない、ただの人間にしか映らない、と言われる理由なのだろうが、人間にしか映らないのはそれこそ読者が固定概念から脱け出せず想像力を開放できないだけな気がする。騙されることもまた読者の一つの才能ではないだろうか。僕は作者の掌にのってやろうと思っていつも読む。それにこんなロボットらしくないロボットがいてもいいじゃない。人もロボットも自我も読者も小説もただただ自由なのだし、SF は想像力の文学なのだから。





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.18 2016 【本:サイエンス/フィクション】 comment4 trackback0

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本が好き!運営担当
突然のコメント、失礼いたします。
書評コミュニティサイト「本が好き!」を運営しております、和氣と申します。

今回書評を拝読し、ぜひ本が好き!にも書評を投稿していただきたいと思いコメントいたしました。

本が好き!URL:http://www.honzuki.jp/

本が好き!では、書評をサイトに投稿していただくと本がもらえる、献本サービスを行なっております。

献本は審査を通過した方のみ申し込み可能となりますが、
今回は会員登録後ご連絡いただければ、すぐに献本申し込みできるようにしたいと思います。

書評家さんの交流も盛んで、本について語れるサイトとなっております。
ご自身の書評サイトと併用で利用されている方も多いです。
よろしければ一度サイトをご覧いただけますと幸いです。

不明な点などありましたらお気軽にご連絡ください。(info@honzuki.jp)
よろしくお願いいたします。
2016.01.20 12:45
チルネコ
ご丁寧なコメントありがとうございます。ですが、既に『本が好き』さんの方には会員登録させていただいてます。同ブログ名のヤフーブログの方で。わざわざお声をお掛けくださってありがとうございいました。

今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
2016.01.20 21:25
本が好き!運営担当
チルネコさま

素敵な書評でしたので、お声がけさせていただきましたが、既に登録されていらっしゃったとは。
大変失礼いたしました。

引き続き本が好き!をどうぞよろしくお願いいたします。
2016.01.21 14:49
チルネコ
>本が好き!運営担当さま

登録させていただいておりましたが、声をお掛けくださってありがとうございました。

拙い感想ですが、今後ともどうぞ宜しくお願い致します。
2016.01.21 21:10

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