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ヴァージニア・ウルフ 『燈台へ』

燈台へ


美しく神秘的な光を投げる燈台へ行こう、暴風雨に妨げられて実現できなかった計画を10年ぶりに果たしたラムジイ家の人々と、その友人たちの心に去来するラムジイ夫人の面影を抒情的に謳いあげた詩的散文。幻想と現実がきらめきながら交錯し、時間の無常さに翻弄される人間の奥底の夢を、鋭い心理分析の上に立った〔意識の流れ〕の手法を用いて流麗に表現した名作である。 (BY 背表紙紹介文 新潮社文庫)


ヴァージニア・ウルフ『燈台へ』の新潮社版を読みました。今では池澤夏樹編纂の世界文学全集で新訳として再出版されておりますが、やっぱり文学は古臭くて項が茶色く変色したものの方が、時の流れを感じさせるし変に読みやすくなっている文体よりも僕は好きなのでこちらで^^何より茶色く変色したページの手触りがいいですよね。ってそんなこと思うのは僕だけでしょうか^^。


本書では第一部「窓」第二部「時は逝く」第三部「燈台」の三章によって描き分けられているんだけれど、主人公と呼べるような決まった人物がいない。重要な人物は数人いるんだけど、語りの視点はコロコロ変わる。というかいつの間にか入れ替わっていて「あれっ?○○が喋ってなかったっけ?」と思ってしまうくらい主観が変わってゆき戸惑ってしまいました。それもそのハズで本作は所謂〔意識の流れ〕という手法を用いていて、不特定多数の登場人物の視点を淀むことなく流麗な文章をもって個々の心理を描写することで語りを固定化させないんですよね。それゆえ段が変わるごとに気を配っていないと今誰が語りを受け持っているのかすら把握できない状態に陥ってしまいます^^。また、視点が変わっても会話や心理描写以外の余計な説明も省かれているので、前後の人間関係を把握しきれていたとしても新たに「これはどなた?」というような人物と勝手に喋っていたりするので、これはなかなか読み解きづらく記憶の整理といろんな意味での把握能力を有していなければ難しい読書となってしまうと思います。かくいう僕も何やらわからないまま過ぎ去ってしまった事柄などもあって、これは再読、嫌、再再読くらいしないと全部読み解けないといった印象でした(苦笑)上手い具合に巻末の解説に大まかな流れを書いてくださっていたのでディテールは把握できましたけど、細たる隅々まで理解するには一回ではまず無理でしょう。もし理解できたなら読解力は相当なものかと思われます。

先の文で三章に分けられていると書きましたが、これがとてつもなく重要。試行錯誤したであろう練りぬかれたプロットの素晴らしさも感嘆するんだけど、第一部ではラムジー家の人々と居候ともいうべき客人たちとの生活を描き、第二部では短い章ながらも第一部から10年という歳月を一気に経過させ、第三部ではラムジー家に戻った人々を時の流れを意識しながら再度描ききっているという描き分け方に一目置かずにはいられません。一章では客人とラムジー家の「半日の晩餐」だけに百数貢を割いてそれぞれの心の動きも鮮明であるのに対して、一章の終わりで重要人物が突然死んでしまってからは、作品自体がガラッとペーソスに包まれあれだけ鮮明に描写されていたラムジー家以下の時間が二章の短い間で10年も月日を経過させてしまう。しかしこの少ししか割かれていない二章の間には戦争がありラムジー家の者の死という重要な歴史があるのだけど、これを敢えて鮮明に描写せず抽象的に描いて魅せるのです。そして、三章のラムジー家で過ごした生き残っている人物の回想録的で思索的なものになるのだけど、こういうプロットを見ると自分の中では大成されると期待されたがプライドと夢だけを持つ老人となったラムジイと全編に面影を漂わせるラムジイ夫人の肖像だったんだと思い至る。

『燈台へ』というタイトルにあるように「燈台へ行く」というテーマも流れているんですが、こちらの方がむしろ付加的なものというか象徴的なものであって、作者が描きたかったのはやはりラムジイ夫人の圧倒的なるヴィジョンであり、ラムジイやその他の人物のラムジイ夫人の影響下からの自己への立志であるのではないかと思う、というかそうとしか思えなかったです。それと少しペシミティックが漂っているけど〔意識の流れ〕をウルフの筆力で描ききいったという一点に感嘆するばかりでした^^


これは絶対ジョイスも読まねばならないと思わされるほど、痛烈に鋭く〔意識の流れ〕に圧倒され今更ながらこんな手法があるのかという発見が。もちろんフォークナーも読み進めなければ!



4.1 なむなむ!

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