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坂口安吾 『白痴・二流の人』

白痴・二流の人


坂口安吾はとても有名だがお恥ずかしながら梶井基次郎、あるいはモリミーから派生して読んだ「桜の森の満開の下」以外に読んだことがなかった。桜の~はとても綺麗な日本語で語られる幻想的な情景が美しくも暗い。が、その作品の姿に魅せられてしまい遅さ咲きながら安吾に興味を持つことになったのだった。そして、黄色い看板のお店で安吾の『白痴』と『不連続殺人事件』を探しつつ見つけたのが右の画像にある角川文庫版の『白痴・二流の人』。新潮文庫版などもあったのだが、巻末の安吾に関する記述の充実点などからこちらにしたが、やはりこちらの方が安吾の一側面くらいは知ることができるのでお得なのではないだろうか。

本書には全8篇の短編が収録されている短編集である。収録作は以下を参考にしていただくとして、収録作の中には名前くらいは知ってる有名作がいくつかあるだろう。この一冊で安吾を知ることはできないだろうが、印象としては上手さを感じるよりも読んで魅せられる類。むしろ文体は壊れかけてたり悪文ともとれそうなくらいヘンテコな文体で書かれるものまである。日本という国の一般的に真っすぐさや清潔さや義理人情が今でも重んじられるその気風や画一社会のようなお国柄が、安吾の作品の中によく出ててくる登場人物の堕落した様やスタイリッシュさが読者のニヒリズムを逆撫でさせたり反応させたりするのではないろうか。特異な読まれ方がされそうな作風なのかも知れない。しかし、決してうまくはない文体も斬新といえば斬新で新鮮味も深みもあるから一種の魅力であるし、心象描写なども濃厚な香りが漂い一つ一つの作品の構築にすら危なっかしさを感じてしまう儚さも伝わってくる。ほっとけなくなるような作家であるがゆえ、小説外でも影響力は大きそう。モリミーなどもそうなのだがNUMBER GIRLというバンドの「桜のダンス」も安吾の桜~遣いの曲だったと思う。理解しなくとも楽しめるのもまた稀なのかな。


「木枯の酒倉から」はしょっぱなということもあってか内容よりもその印象的な文体やふざけてる遊んでるような表現に脳を打たれた。「う、ぶるぶるじゃよ。」「あべべい!!」「オモチロイ」「ポクポクと壁を叩いた」なぞなぞ。酒呑みの主人公が抵抗したにも関わらずああいうラストになるのも激しい相克ゆえか。


「風博士」は奇抜な設定とユーモア。木枯~と同じ野心と絶望の相克が見受けられる。また、文体も相変わらず面白く「彼はかつらを以て之の隠蔽をなしおるのである。ああこれ実に何たる滑稽!然り何たる滑稽である。ああ何たる滑稽である。」どんな文体だっ!(笑)と思いつつも読みながら笑えてしまうファルスを含む古典作品は貴重だ。ラストの「POPOPO!」とシルクハットを被りなおし「TATATATATAH!」と風博士が跫音を消してゆく様には大いなるカタルシスを感じる。本書でも特に好きだった短篇となった。


「紫大納言」紫の大納言という人が月の国の侍女が落とした小笛を拾ったことからあれよあれよと災難にと巻き込まれ苦悩するという、救いが無く徹底した悲劇を描いている寓話的な小説。『かぐや姫』のようなおとぎ話調から始まるがなんのその。「救いがないことが、唯一の救い」と作者がいうように救いがないお話へ落ちてゆく。でも、みやびな趣もあり不思議。

「真珠」特攻隊と平坦に生きる「私」の不思議な対比話である。が、読んでいるとこれは小説なのか何なのか捉えどころのない書き方がされている。誰かに、というか特攻隊員に語りかけるような文章からして安吾の叙情が詰まってるのであろう。<死>と捉えず<遠足>と捉えるところに安吾にしかないカタストロフィーがある。

「二流の人」では黒田如水という戦国時代に活躍した武将を主人公にした歴史小説なのであるが、安吾自身の独特の歴史観から読み解かれている興味深い一篇。黒田如水をピックアップするところからしてちょっと変わってるのだが、それを安吾の気って捨てるような文体で「二流の人」として描くところがかなり奇抜である。それに加え英雄的な人物や武勇伝を持った武将達ですらどかかしら欠点を浮き彫りにして描いていて、「かっこよくない」のが逆に「かっこよく」映る。一流の人物でも二流なところは必ず存在するという安吾の切り口はまったく尋常じゃなく鋭いユーモアだった。

「白痴」は未読だったが筋は知っていた。だが残念ながらこれだけはあまりピンとこなかった(苦笑)

まだ僕には理解できないのか、一生理解できないのかすらわからない。「生きる望みがない」から白痴の女を背負って逃げるところには今更ながら衝撃が走る。が、なぜかあまりピンとこない。戦争を経験した者ならばまだしも、これを一回読んだだけで共感できる今の世代がいるのだろか?と思ってしまった。。デカダンスはイマイチ僕には向かないのかも^^;でも、初めてよんで「白痴」のなんたるかが解った現代人がいるのだろうか?と思うがどうでしょうか。

「風と光と二十の私と」は執筆当時の安吾の心象風景が見えた気がした作品。とっても爽快で率直さを感じ、フィクションとノンフィクションの狭間で安吾が揺れていたような。自然に対する描写が凄まじく自然であった。

「青鬼の褌を洗う女」女性の一人称で語られてるのがなんか初めて読んだような新鮮味を感じるでも、これを男の安吾が違和感なくというかそこまで女を見抜いて書いているのである。書き手であれ読み手であれ「男だから~云々」「女だから~云々」といった感受性を言い訳にしたものの見方は陳腐としか思えない表現となってしまう。多少はそりゃあるのだろうが、基本的に感受性論は無意味な言い訳だ。でもまた一報では主人公の女性に共感したり憧れを抱いたり羨望な眼差しで見つめたりする女性は意外と多いのかも知れないなどとも思ってしまう矛盾ぶり。「諦める」という言葉に甘美さを感じて眉をひそめちゃった。



4.4 なむなむ!


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.24 2010 【本:言語芸術】 comment4 trackback0

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坂口安吾、面白そう!
こちらの作品は短編集なんですね。読みやすそうな印象ですが、
どうでしたか?
いずれ読めたらいいな~。インプットしておきます。
2010.11.24 22:26
チルネコ
坂口安吾はハマつとどっぷり系だと思いますよ~^^
短編集なのでお気に入りもいくつか発見できるやもしれません。
歴史ものがあったりPOPなものがあったりするので、
読みやすかったり読みににくいものもあるかもです(苦笑)
でも、太宰同様暗いイメージが付きまといますが、突き抜けない
明るさがあるので(笑)いずれ触れて見てくださいね^^
2010.11.25 00:13
読書系女子
あれれ。もしかして坂口安吾って案外読ませるのでしょうか?
日本文学は受験勉強みたいでイヤっと何も読んでいないのですが、
レビューを拝見してちょっと興味が!!
(今の私は小説読解能力が恐ろしく低下しているので、復旧したらぜひ読みたいです)
2011.02.14 14:11
チルネコ

>読書系女子さん

僕も安吾ってお仲間さんが押してくれるまで読まなかったんですが、読んでみるとなかなかPOPなんですよね(笑)難しいのもあるんですが、ドストエフスキーとかに比べたら全然ですよ^^;;確かに学生時代は文学=勉学という印象だったんですが、今は読書=愉楽になってるのでなんでもこいなスタンスになっちゃってます^^「白痴」は読解力いるかもですが、ほかはストーリーで読ませるものも多いので、ぜひどうぞ♪
2011.02.14 22:39

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