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常石敬一 『原発とプルトニウム ~パンドラの箱を開けてしまった科学者たち~』

原発とプルトニウム


自然状態ではほとんど存在しない猛毒の放射性元素、プルトニウムは、原爆の材料として人工的にこの世に生み出された。作ったのは科学者。最初は自らの好奇心に忠実に、新しい発見とアイディアに興奮する科学者だったが、やがて戦争の嵐の中で政治の中心に。巨大科学の時代が到来。科学の性格が大きく変質した19世紀末から半世紀を、懸命に生きる科学者たちの群像としていきいきと描く。そして今日の日本の原発とプルトニウムをめぐる複雑な事情にメスを入れる。   (BY BOOKデータベース PHPサイエンス・ワールド新書)


この時期だからこそ読んでおかないといけない部類の本というものがある。そう思って買ったのが本書であり、少しでも原発や核の知識を持っておきたいとの考えでのこと。地震とメカニズムに関するような本も読みたいんだけど、お手頃なのが見当たらなかったのでこれに^^。

本書のタイトルは『原発とプルトニウム』となっている。なのでてっきり原発についてのことと、プルトニウムに関することが書かれていると思ったのだが、随分想像してたものと違っていた(苦笑)両者ともに関する記述はあるのだが、三分の二ほど原子核の物理学史の為にページが割かれているのだ。これはまぁこれで科学者の情熱やプルトニウムへのコミット、快哉を叫ぶような発見までのプロセスを知れるし、簡潔に書かれているので読みやすくもある。だが、求めていたのは〔原発〕や〔プルトニウム〕そのものであって、副題である「パンドラの箱を開けてしまった科学者たち」ではないのだ。自分のサーチ不足も否めず反省しなければいけないが、この内容であればむしろ「パンドラの箱を開けてしまった科学者たち」をタイトルにしなきゃ間違いだ。編集者がこうしたのか著者がこうしたのか知らないが、ちょっとこの新書シリーズのタイトルには注意しなければならないですね(苦笑)

でも科学史を順におってゆくことによって、見えてきた利点というのもあって、時代の変遷によって科学者と科学との向き合い方が変わってきたことが一番興味深い。というか、純粋に科学を探求できていたのは第二次世界大戦以前までで、そこからは国家の軍事機密というベールに科学が絡めとられて、科学のあり方が変わらざる終えなかったのだ。科学者にとってはホント不本意だっただろうなと気の毒になってしまった。

そういった科学史が終盤まで続きそれが語り終わると、最近TVで連呼される専門用語や原子力発電所の簡易構造などが登場する。やはりここが一番本書で懸命に読めた。原子炉には軽水炉、重水炉、黒鉛炉があり、それぞれ濃縮ウラン、天然ウラン、天然ウランを使い分けていること。減速材も原子炉の型によって違うことすら知らなかったのでとても為になる。そしてなぜ発熱が必要なのか?発熱してからどうするの?なぜ冷却が必要なの?というレベルをやっと知れただけでも有意義な読書だったと思っている。

また、人口の原子炉(天然の原子炉的なものも昔はあったことが確認されている)はよく耳にするようになった制御棒によって、連鎖反応の暴走を防ぐようになっているのだが、この制御棒なるブレーキが利かなくなった例とも言えるものが、スリーマイル島でありチェルノブイリであるようだ。今原発で作業員の方々が命をかけて冷却作業や復旧作業を懸命にやってくれているが、これはあくまでも「冷却水がなくなって空焚き状態」を緊急炉心冷却装置が流されてしまったので人海戦術で行っているまでということらしい。なので、スリーマイル島やチェルノブイリとはまだ違う話のようだ。

話は変わってプルトニウムをためこむ原子力燃料の使い方には二通りあって、「核燃料サイクル方式」と「ワンススルー方式」があり、日本は国策として前者を選んでいるのだ。これは資源を海外に依存する日本という側面から考えれば、リサイクルで何度も使えるという利点がある。しかし、そのリサイクルに有用な資源として利用するため日本にはプルトニウムが32トンも貯めこんでいるのである。保管するのである(たぶんこれが今の福島での停止していて廃棄物を入れていたという4号機のプールも含まれるのかな?)サイクル方式故に膨れ上がりはすれど減らしはしないというのがなんだかそれだけで恐ろしく感じる。しかし再処理工場と高速増殖炉とで核燃料サイクルを軌道に乗せようとしてるのは日本だけのようで、唯一の例であるらしい。それにこれは莫大な経費もかかるし、ますます原子力に依存するのは今回の現状でわかりきっていることだがナンセンスだ。今回が沈静化したら東電も政府もなんらかの動きはせざる終えないが、国民はちゃんとその動向を監視しないといけないなと思う。

また最後に著者の一番印象的だった本書の総括の部分がとても共感できるものだったのでまとめると、

「核燃料を追い求めプルトニウムを取り出しためこむことは、核拡散の雰囲気を醸成なる。「被爆」経験をふりかざして核拡散を謳ってもこれでは意味も説得力もない。オバマの核廃絶の演説はインパクト大だったが、これからお手並み拝見的な風潮と一緒だ。日本も核廃絶を謳うならば、まず核燃料サイクルの廃棄が不可欠だ。またこのリサイクルには莫大な経費や広範囲な環境汚染も心配。事故が起これば人的被害も危惧される。経済的にも負荷がかかるし、核をためこむということはテロリストの格好の的でもある。まだ再処理施設も高速増殖炉も本格始動の目処はたっていない。だからこそ国際的な疑惑の目、核廃絶、環境保全の為にも核燃料リサイクルを今のうちに断念したほうが懸命だ。」

今回の原発の事故によって「想定外」はもう乱用しすぎたと思う。「人体に影響はない」というのも一般市民には心理的にそれだけで負担である。今回の「想定外」でさすがに関係者は原発との向き合い方を変えざる終えないだろうから、今本格始動してない原子炉は今までの経費はもったいないがこの際使わないでもいい。この税金の無駄なら許せる。そして今回の原子力での関係者以外の一般市民もライフスタイルは変えないといけない。

そして僕も唯一の非核三原則を持つ国であり、唯一の被爆国である日本は、核拡散防止の先方にたつべきだと胸のうちでは思っていたのだが、原発の面から見ると高らかにそれを言えないということがわかった。物事は一方向から見て物言うだけでは、見えてないものが大きいというのを再認識させられた。そう思うとちょっと恥ずかしいという思いすら抱いた。もっと多角的な面からダイナミックに俯瞰できる知識がまずは必要だ。これからもっともっと日常に関わる近いことも遠いことも直接的なことも間接的なことも知らねばと気を引き締めたのだった。



3.6 なむなむ!



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.02 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment6 trackback0

ヘンリー・クーパーJr. 『アポロ13号 奇跡の生還』   訳 : 立花隆

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人類初の月面着陸の翌年、1970年4月13日。ヒューストンを飛び立ったアポロ13号は、突然生じた船体のトラブルから、当初予定していた月面着陸を断念、制御不能の状態に陥った。失われていく酸素、水、エネルギー…宇宙の闇に消える恐怖と闘いながら、絶体絶命のクライシスに立ち向かう三人の飛行士とNASA管制官。無事帰還するまでの息詰まる過程を描いた迫真のドキュメント。   (BY BOOKデータベース 新潮社)

ヘンリー・クーパーJr.著『アポロ13号 奇跡の生還』を立花隆が訳した本ですね。1994年刊なので古いといえば古い本ですが、原書は1973年に出てますので、だいぶタイムラグが発生してますね^^;もしかしたらもっと早くに他の訳があるのかもですが。。。もちろんアポロ13号というと映画やらドキュメンタリーの映像も作られており僕も拝見しておりますが、本書はそういう人間ドラマとは少し離れた見地から語られておりました。

本書は始まりからして少し他とは違っていてすでにアポロ13号は打ち上げられて宇宙空間におり、問題が発生する辺りから語られてゆきます。ここからしてすでに人間ドラマや打つ上げ時の拍手喝采場面は切り取られているわけです。すなわち本書はそういうアポロ計画に携わったり傍観したりする〔人間〕にはスポットを当てずに、むしろ問題をどう乗り切ったか、この時は何が起きていたかを事細かに記するという〔技術面〕に重きを置いて語られてゆくのであります。故に、少し分かり辛い描写や語句があるのですが少し違うアポロ13号をうかがい知ることが出来ます。

アポロ13号は月へ到達する前の軌道で酸素タンクが爆発し問題発生。しかしすでに引き返すよりも月を周回するほうが好都合な位置で問題が起きているので、やむなく月を周回して地球に戻ることになるんですが、このロケットというものは一つ不都合が生じると連鎖的に問題が起きてしまうような構造になっており、問題発生~帰還までの間アポロのクルー3名と管制塔の十数名は原因究明~問題解決に翻弄されてしまいます。



aporo.jpg



↑アポロ13号全容・・・<指令船>はちゃんとチョコの〔アポロ〕の形してますね(笑)


次から次へと問題が起きる上に、アポロのクルーは<指令船>と<月着陸船>を往復したり、エネルギー削減の為に極寒の地にいるような環境に立たされたりと過酷です。本書では技術的な事柄をより詳しく書こうとされているので、クルーの描写や管制官とのやりとりも淡白ですが、過酷さや状況からくるプレッシャーなどは少なからず伝わってきました。

でも一番すごいのは技術的な面もそうなんですが、地球で舵取りの役割をしている管制官たちの危機管理能力やトラブルを解決するプロセス及び考えられない問題でも各々がきっちりと役割を果たし切り抜ける決断力・実行力が備わっていることです。技術面では日本ももう有人飛行できる程度の技術まで持ってけるでしょうし、2025年までに有人飛行する計画もあるようです。が、技術面では日本もイケそうですが、むしろアポロ13号でのミッション遂行能力や緊急時の迅速な対応などの大プロジェクトを遂行する力は残念ながらないと思われます(苦笑)アポロ13号での責任者は当時36歳という若さでしたが、リーダーシップもプロジェクトを纏める協力体制も実行力も並大抵では無理だと感じました。まぁまず無人飛行と有人飛行ではまったくノウハウも違いますし、それほどの大プロジェクトの予算なんかもウチらにはないでしょう^^。中国にGDPは抜かれちゃったようですが、あと5年もしたら宇宙も抜かれちゃうようで悲しいですなぁ^^;

トム・ハンクス主演の映画のようなドラマチックさはなかったですし、淡々としすぎた語りなので味気なさを感じる方もいるかも知れません。が、ただ発生してしまった絶望的な状況でも、全員で〔クルーを地球へ帰すんだ!〕という団結力とそれを達成した事実。それはアポロ13号が窮地に立たされた瞬間、現場にいた人間が感じた絶望と苦悩と使命を脚色なしに伝え、あの瞬間のリアルは決してドラマチックでもなんでもなかったんだろうというリアリティーを逆に感じさせてくれ新鮮なルポタージュだったと言えます^^


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.01 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment2 trackback0

池内了 『ヤバンな科学』

ヤバンな科学


科学者という名の「野蛮人」が地球を支配しようとしている!遺伝子操作、地球温暖化、宇宙開発など、地球規模の問題から、SARSをはじめとする新しいウイルスの流行、BSE(狂牛病)騒動、携帯電話による電磁波被曝などの生活に直結した問題にいたるまで、最新の科学・技術問題をわかりやすく解きあかす。あまりにも巨大化した現代科学にかわる、身近な自然現象や人間の暮らしを考える、新しい博物学を提唱する。  (BY BOOKデータベース 晶文社)


宇宙物理学者である池内了(さとる)著『ヤバンな科学』でございます。『観測的宇宙論』『泡宇宙論』などの著作から〔宇宙論〕の大家のような方なのだと推測される。また、僕が毎回更新を楽しみにしている松岡正剛さんのHP『千夜千冊』でも『物理学と神』という著作を取り上げられており、常々読みたいと思っておったところ入手したので早速一気に読んでしまった。

本書はタイトルにあるように〔物理学〕とか〔生物学〕といった限定された科学学問の話などではなく、〔科学〕と直結する多岐に渡る事柄へ言及されていて、時事評論のようなものからコラムエッセイといったスタンスで多くの事が書かれている。例えば「食」というものを遺伝子操作や人工化学物質という観点から捉えてみたり、「環境エネルギー論」や「超科学」などに走ってしまう理由など、科学というものを科学者として、または一般人目線で述べられたり警句を発したりしているので、普通に読み易く科学の面白さと危うさを同時に知れたりもする易しい本だと思います。

科学者なのに批判的な印象も強かったんですが、著者の発言はこうである。

「私は科学の否定論者ではなく、科学がまっとうに育ってくれることを望む人間である。それ故こそ、

厳しい科学批判をする一方、科学の新しい可能性を探りたいと思ってきたのだ。」と。

このあとがきでの言葉は至極もっともであり、科学の研究と成果に執着するあまり、科学者はそれによって齎される恩恵とそれと共に付随する悪を念頭に置くということを怠ってきたのも事実であるからです。現にアインシュタインでさえ後は反対運動をしたとはいえ、自身の研究が原爆水爆を生み出してしまう元凶となったのは事実なのです。池内さんもそれを本書の一つめで「アインシュタインが一番悪い!?」というタイトルで論じておられる。しかし、これはアインシュタインが悪いのでもないし、アインシュタインが発見しておらずとも人類は遅かれ早かれあの方程式を誰かが発見したハズだ。しかもその反面原発など生活にかかせないいほどの恩恵も受けているのである。要は科学者は自覚し、国は吟味し、市民は監視しなければならないのであると僕は思う。それが科学の恩恵を被る表裏一体ではないのか?リスク回避だけ科学者や政治家にまかせっきりで、クーラーガンガン、日々インターネットし温暖化や環境は企業や国が頑張れ~では全く話にならない。まずは簡単なことから知ることを始めればいいのだ。僕の現状がまさにそれであります(オイ)^^。

まずは知ることから始めればいいのであり、こういう本はそういう動機で読んでも理解可能な範囲の事象ばかりを論じているのです。何も一夜にしてフランスでベストセラーとなったモノーの『偶然と必然』という難解な本を読めとは誰も言わないだろうが、日本の一般人の科学探索や探究心は以上に少ない。小説を読むとはまた少し異なるけど、読み物としての面白さはなんら遜色がないのに^^;ホーキングは売れたようだけど、これはやはり話題先行の流行としてだと睨んでいるがどうでしょう?そこから発展さしたら知的水準が高い国民性が出来上がるハズなので日本の科学者さんも頑張ってベストセラー出して欲しいです(笑)

アスベストやBSE問題が発覚するとまず「予見できなかった」や「科学的根拠がない」などというお国柄であるが、これは放置気味だったメディアも一般市民も悪い。発覚するまでは任せっきりで露見したら「あんたら専門家の怠慢だ」などと言うのは少し自分勝手な解釈である。科学実験でのモラル・ハザードはどうしようもないとしても食に関することや環境面でのモラル・ハザードは少なくとも市民が科学に関心を持ち、科学に敏感であればあるいは防げる事柄だとも思う。なんでもかんでも専門的な問題だけ科学者などに任せて、科学者が生み出した成果からくる恩恵だけ受けていてはいつまでたっても科学技術の内実はブラックボックスのままなのだ。

〔京都議定書〕ではホスト国として張り切ったわけだが、成果もマイナスだしそもそも日本は1985年のオゾン層破壊を防止する「オゾン層保護に関するウィーン条約」などでは反対しているし、「モントリオール議定書」でもしぶしぶ締結したが、元は反対しているのであります。いいことだけ大々的に報じて短所を隠すような体制ではいけないなぁとしみじみ感じました^^。

何も難しい科学を知ろうとしなくてもいいのであって、背伸びしても僕みたいに基礎がないと何もならない(笑)夏目漱石の弟子で物理学者の寺田寅彦は「風土の科学」という土着に即した科学研究にも大きな可能性があると示唆していたが、一般人にもそれは可能というか細分化されすぎた物理学や天文学はもはや無理なのでまずは身近な対象から普遍的な科学を見出せばいいんだと思います。生物、川の水、草花、雲、環境の変化など〔等身大の科学〕に興味を持てれば十分。その興味を書物などに求めれば、実験なんかなくっても本書のような書物から科学と接することができるんだから。そしてその先にはSF軽視な読書界空前のSFブームが舞い降りてくるという付加価値も楽しみなのでした(←阿呆)



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.01 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment0 trackback0

藤原正彦/小川洋子 『世にも美しい数学入門』

世にも美しい数学入門



「美しい数学ほど、後になって役に立つものだ」数学者は、はっきりと言い切る。想像力に裏打ちされた鋭い質問によって、作家は、美しさの核心に迫っていく。  (BY BOOKデータベース ちくまプリマー新書)


数学者である藤原正彦と作家・小川洋子の対談形式の共著である。藤原さん(ちなみに父は新田次郎、母は藤原てというサラブレッドでもある)と言えばまだ著作を読んだことはないのだけど、『国家の品格』や『天才の栄光と挫折』という多くの読者に支持されている著作がある。一方小川さんもたくさん名作があるが、本書が数学についての対談ということを考慮すると『博士の愛した数式』のタイトルを出すのが適切だろうか。『博士の愛した数式』は僕も既読なのだが、その中の主人公である天才数学者には胸を打たれる場面が数多くあった。その主人公のモデルがこの藤原さんということで、まず気になり、経済学などを学ぶ上でも数学は必須なので学生時代からっきしだった数学を学ぶ上でのスタートラインだと思って読んでみたわけである(笑)

本書は160P弱しかないが、終始対談形式でページが進んでゆく。この形式故に堅苦しく思ってしまう数学の話が柔らかに語られ俄然魅力に満ちてくるのだが、それだけでなく藤原さんの発する数学の魅力的で時に蠱惑的な物言いが数学の面白さを如実に顔を出してきますます魅力は冴え渡ってゆく。本書を読めば数学が苦手な方であろうと、数学という人為的でない真理に引き込まれないハズがないとまで言ってもいいんじゃないだろうか。多くの方が思いそうなことで恐縮だが、一冊の教科書をやり通すよりもまずはこういう魅力的な本に2~3時間でもいいから授業で割いて、「数学ってこんなに面白くてエレガントなんだっ!」というのを伝えてから勉学の方に入ったほうが絶対数学の偏差値が上がると思う(笑)

内容のほうはページ数がないので突っ込んだ記述はあまりない。だが数学という学問の表面を丁寧になぞって興味がわく。例えば、俳句を用いて日本人の美的感覚を数学に応用するような話であったり、数学はすぐに実用するには向いてないが、だからこそエレガントなのは何故なのか?という答えに導いてくれたりする。また〔友愛数〕や〔完全数〕や〔社交数〕、〔幾何と代数の関係〕であったり〔ゴールドバッハの問題〕や〔0を発見したインドの凄さ〕などなど、数学談義にはことかかない。なにせ〔三角形の内角の和が180°になる〕というものの美しさがパッと理解できちゃうようになっちゃうんだから。それにお二人が教える側と教わる側のようで両者とも楽しんでいるのが伝染してしまって読んでて楽しくなっちゃうのだ。

一番驚いたのが〔フェルマー予想〕の項。サイモン・シンの傑作『フェルマーの最終定理』はいつか読んでみたいと思ってたのだが、今はそんなに読みたくなくなっちゃった(笑)なぜかというと、ワイルズが証明したのは〔フェルマー予想〕よりむしろ〔谷山=志村予想〕のほうであり、俄然ちらの定理のほうが美しいらしいのだ。今ではそちらのルポを誰か書いてくれないかなと心移りしたのである(笑)また、日本人数学者の功績の大きさにも驚かされ、「日本人は猿真似国家だ」なんてことはなく日本人の美的感覚は世界でも稀であるという先生の言葉に深く敬意を表す次第であった。そう、読了後は直接教わってないにも関わらず、藤原さんを「先生」と親しみをこめて慕いたくなるような美しい数学の入門書なのだ^^



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.03 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment4 trackback1

J・G・バラード 『千年紀の民』  訳 : 増田まもる

千年紀の民


ヒースロー空港で発生した爆破テロ。精神分析医デーヴィッド・マーカムはテレビ越しに、事件に巻き込まれて負傷した先妻ローラの姿を目撃する。急ぎ病院に駆けつけたが、すでに彼女の命は失われていた。その「無意味な死」に衝撃を受けて以降、ローラ殺害犯を捜し出すためデーヴィッドはさまざまな革命運動に潜入を試みるが…。新たな千年紀を求め“革命”に熱狂する中産階級。世紀のSF作家バラードの到達点。  (BY BOOKデータベース 東京創元社 海外文学セレクション)


本が好き!〕からいただいた献本です。・・・・・一日遅れちゃいました^^;;;


主人公であり精神分析医デーヴィッド・マーカムはヒースロー空港で突如発生した爆破テロをテレビで目にする。が実はその被害者の中に先妻ローラがおり亡くなってしまうのだ。マーカムは彼女を殺したテロリストを探し出すために革命運動に参加してゆくのだが、その先にあるものは何だったのか?というのが大まかな祖筋。ヒースロー空港というからにはイギリスが舞台なのだが、これが〔中産階級〕の為の革命なのである。イングランドというと階級制が色濃く労働階級を描いたものも多いが、中産階級となると少なくとも僕の記憶ではあまり読んだことがないのでそういった観点からも興味は尽きない本だった。

またバラードというと自分の中では勝手にSFの枠組みに入れてしまっていたのだが、なんのその、本書はSFというよりもむしろ文学的であった。なかなかの長編なので少し疲れてしまう部分も正直あるが、とても抒情豊かに書かれていて詩的な表現力は恐ろしいくらい心に残ってしまう。それにドラマチックな文章でもあるし、ニヒリズムや焦燥感なども内包していて奥行きのある雰囲気がたまらなく魅力的である。もし本書の内容が無味乾燥なものだったとしても、バラードの文章だけで一杯イケちゃうのではないだろうかというくらい。

内容からするとこれが9.11のテロを受けて書かれたという点が明らかであり、バラードの関心がある箇所は読んでいるとおのずと理解できるであろう。しかし、バラードが描きたかったのはこういうテロリズムを通じて〔無意味性〕を描きたかったようだ。テロや連続無差別殺人などがあると犯人の過去や環境を持ち出すが、そんなことはこういうものとは次元が違うとバラードは言っているのだ。何かをやってみても世界は無意味性に行き着いてしまう。しかし、何かが生まれるのもまた無意味性からなのだ!とバラードは圧倒的な思弁と筆致で認識させてくれたのだ。

最後に一つ読んでて興味をそそられたものを紹介すると、主人公である精神分析医デーヴィッド・マーカムの心理学である。精神分析医なのだから心理学を使うのは当たり前なのだが、これがフロイトやユングなどの誰でも聞いた事あるものではなく、アドラー心理学を扱っている箇所だ。僕も中盤まで全く知らなかった心理学なのだが(^^;)、読んでいるうちに主人公の心理学の一貫性に気付いてもしかしたらこれは作者の創造の産物じゃないなと思って調べてみたら案の定だったというわけだ(苦笑)今後本書を読む方がおられればこのアドラー心理学の理論を踏まえて読むと、また読み方も変わってくると思うのでご参考までに^^



4.0 なむなむ!



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.26 2011 【本:サイエンス/フィクション】 comment4 trackback0
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